【スポーツ】友野一希 無名から世界5位へと飛躍
3月末にフィギュアスケートの世界選手権が行われ、日本は平昌五輪金メダリストの羽生結弦(ANA)が欠場したものの、五輪銀メダリストの宇野昌磨(トヨタ自動車)が2位。初出場で、世間的には“無名”の存在だった友野一希(同大)が5位と躍進し、来季の出場「3枠」を確保した。
これまで世界で主だった成績はない中、19歳の友野は踏ん張った。
他選手のケガにより代打で初出場した16年世界ジュニアは15位。17年も9位と振るわなかった。1年前の世界選手権の頃には、テレビ観戦した感想を「別世界のことみたいって思うけど、そういう意識をなくさないといけない」と語っていた。
シニア1年目のこの五輪シーズンも、決して目立った成績を残していたわけではない。11月のNHK杯も、出場予定だった村上大介が病気で欠場となり急きょ代打出場。SPと合計点で自己ベストを更新し7位に入るなど健闘したが、「台頭」と言うほどのインパクトは残せなかった。平昌五輪代表を争う全日本選手権は4位に食い込むも、代表入りは夢と消えた。
このシーズン、印象的だったのが友野のシニアデビュー戦であるUSインターナショナル(米国)だ。会場は約1300メートルの高地とあり、女子で優勝した本田真凜が酸欠で演技後にふらつくなど薄い空気への順応に選手も苦しんでいた。その中、終盤まで元気のある演技を見せていたのが友野だった。
とにかく何度も曲をかけ続ける練習で『滑る体力』を鍛えてきたという。フリーでは転倒もあり、満足のいく演技ではなかったが「ウエストサイドストーリー」の軽やかな音楽に合わせて米国のファンから自然と手拍子が巻き起こり、自信を深めた様子だった。「前は『平昌五輪を目指したい』って口にするのも怖かったけど、五輪って言葉を自分の中で持って、奮い立たせて、成長スピードしたい」とも話していた。
もともとアイスショーでは警察官の衣装を着て踊ったり、ヌンチャクを使ってブルース・リー風の演技を見せたり、観衆を楽しませるのが得意な選手。好きな食べ物はラーメンと、19歳の男子大学生らしい面も魅力だ。
だが同時に、世界で戦うアスリートらしさやその自覚はまだ薄い。この「世界5位」という看板に胸を張りつつ、首をかしげるのも友野自身だ。
多種類の4回転ジャンプを駆使し、超ハイレベルな戦いが繰り広げられた前年の世界選手権5位の点数よりも40点近く低く、前年に換算すると9位相当。「世界と戦えると思える部分もあったのでは」と問うと「いや、(差を)実感しました。自分の今できる限界が分かってしまった」と返ってきた。
「今季は運もよかったと自分でも思う。でも運がよかっただけじゃなくて、そこで結果を出せたのは、自分の中でもいい収穫。ここからやることはたくさんある。全てにおいてバランスのいい選手に、ジャンプだけじゃなく、表現で感動させられる選手になりたい」と友野。来季は海外で振り付けをする計画もある。本当の意味で世界と戦える選手になれるか、その勝負はここからだ。(デイリースポーツ・國島紗希)
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