【野球】目立つ中大の“残留力” 東都入れ替え戦で見せる無類の強さ
全日本大学野球選手権の全日程が終了した翌日の神宮で、負けられない戦いが繰り広げられていた。18日から降雨中止を1日はさんで21日まで開催された東都大学野球の1部2部入れ替え戦。1部最下位・中大と2部優勝・日大の争いは、中大が2勝1敗で1部残留を決めた。
1部なら大学野球の聖地・神宮でのプレー継続、2部なら関東の各球場を転々とすることになる。勝つと負けるとでは天と地の差。3回戦試合終了の瞬間にはナインがマウンドに集まって喜び、清水達也監督(54)もたまらず目に涙。計り知れない重圧に打ち勝ったことを印象づけるシーンだった。
中大は08年秋に1部へと復帰して以来、今回を含めて直近10年で3度の入れ替え戦を経験しているが、その全てで1部残留を果たしている。いずれも初戦を落としてからの連勝というパターン。降格の危機にさらされながら、土壇場での強さが目立つ。
原動力となったのは4年生の投打の柱だ。主将の吉田叡生(としき)内野手(4年・佐野日大)が「キャプテンが背中で引っ張ろう」と1回戦敗戦後に頭をきれいにそって気合を注入すれば、エース・伊藤優輔投手(4年・小山台)は3連投で2勝。指揮官も「伊藤もいつでもいける準備をしてくれた。(吉田の行動で)みんなの心が強くなった」と最敬礼した。
吉田叡、伊藤はともに16年春の青学大との入れ替え戦でも主力としてプレーした。「4年生が引っ張る姿を見てきた」と伊藤。先輩たちの背中を目の当たりにした2人が最上級生となった今年、くしくも2年前の再現を演じてみせた。
これではダメだと前置きはしつつ、吉田叡は「中大は崖っぷちに立たされたら強い」とチームを分析した。厳しい場面を乗り越えてきた経験が、メンバーが入れ替わったとしても脈々と受け継がれている雰囲気がある。
今季を含めて直近20シーズンで1部最下位チームが2部に降格したのは12度と、下克上は珍しくないことだ。実力が伯仲する“戦国東都”。今回の対戦相手だった日大も京田陽太(現中日)を擁して16年秋に1部優勝した実力を持つ。
「いつまでも土俵際でこんなことをしていても仕方がない」と清水監督は気持ちを新たにした。何度も修羅場をくぐり抜けてきた中大。粘り強い“残留力”が04年秋以来の1部優勝へ向けて生きてくるにちがいない。(デイリースポーツ・佐藤敬久)