【芸能】フジロック22年目の大変化 ヒップホップがメインのポジションに
世界的にも知られる国内最大級のロックフェス「FUJI ROCK FESTIVAL’18」(27~29日、新潟・苗場スキー場)が、22年目の今年、大きな変化を迎えようとしている。
6日に確定した最終ラインアップとタイムテーブルでは、なんといっても米国のヒップホップ勢が目を引く。最も大きなグリーンステージで初日がN.E.R.D、2日目がケンドリック・ラマーと、3日間中2日間のヘッドライナーを占めているのだ。
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N.E.R.Dは3人組で、本隊の活動に加え、チャド・ヒューゴとファレル・ウィリアムスの2人はプロデューサーチーム「ネプチューンズ」としても音楽界に大きな影響を及ぼし、ウィリアムスはソロの「ハッピー」やダフト・パンクに客演した「ゲット・ラッキー」など、ワールドワイドな大ヒットを連発している。
ラマーはグラミー賞で2015年に2部門、16年に4部門、今年は5部門を制しており、今年はまた、ラッパーとして初めてピュリツァー賞を受賞。ヒップホップの枠を越えて現在、米国で最も重要なアーティストと目されている。
米国では既にポップスのメインストリームとなっているヒップホップ、フジロックでも01年にエミネム、07年にビースティ・ボーイズがグリーンのヘッドライナーを務め、00年にランDMC、09年にパブリック・エネミー、14年にアウトキャストといったレジェンドが、2番目に大きなホワイトステージのヘッドライナーを務めたこともある。
14年にはヘッドライナーとして発表されていた超大物カニエ・ウエストがキャンセルする“事件”が起きた。カニエが予定通り出演していれば、この年は先述したようにアウトキャストがホワイトのヘッドライナーを務め、グリーンでは佐野元春がヒップホップアルバム「ビジターズ」(1984年)の再現ライブを行ったため、ヒップホップ色を強く感じさせる年になっていたと思われる。
とはいえ、過去21回、グリーンのヘッドライナーを務めてきたアーティストを便宜的にカテゴライズすると、ロック系アーティストで3分の2を占めており、次いでダンス系となる。ヒップホップ系は先述した2組しかいなかった。
それが今年は一変した。N.E.R.Dとラマーの他にも、ホワイト初日のヘッドライナーにポスト・マローン、グリーン最終日の3組目にアンダーソン・パーク&ザ・フリー・ナショナルズとヒップホップの旬なアーティストが配置され、ヒップホップがかつてなく重要なポジションを占めている。
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今年、もう一つの大きなトピックが、62年のデビューから米国のポピュラー音楽をリードしてきたレジェンド中のレジェンド、ボブ・ディランが16年のノーベル文学賞受賞後、初来日を果たし、最終日のグリーンステージにヘッドライナーとして登場することだ。
101回目の日本公演でもある今回は、ヘッドライナーでありながら出番はトリ前(トリは米ロックバンドのヴァンパイア・ウィークエンド)という、極めて異例の出演順となっている。ミステリアスなことで知られるディランらしい“事件”ともいえる。
2日目のヘッドライナーであるラマーは音楽性のみならずリリックの面でも高い評価を受けており、カリスマ的な影響力も含めてディランとの共通点は多い。ラマー~ディランという流れは、強引な言い方をすれば、米国のポピュラー音楽史を通観できるラインアップともいえる。
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攻めの姿勢が光る今年のフジロック。2018年は、歴史的な転換点となるかもしれない。(デイリースポーツ・藤澤浩之)