【スポーツ】39歳の大ベテラン安美錦、名古屋場所で打ち立てた偉大な記録
大相撲名古屋場所(7月22日千秋楽、ドルフィンズアリーナ)は稀勢の里、白鵬、鶴竜と3横綱全員が休場し新大関栃ノ心まで離脱。猛暑で館内のエアコンまで不具合を起こした異常事態場所を盛り上げた1人が39歳大ベテランの十両安美錦(39)=伊勢ケ浜=だ。
初日から好調を続け優勝争い。8日目に偉大な記録を打ち立てた。39歳9カ月が39歳0カ月の豪風(尾車)との高齢対決。はたき込みで制し、6勝目(2敗)を挙げた。通算勝ち星数が872勝に達し、“昭和の大横綱”大鵬と並んで歴代8位となったのだ。
「いいのかな並んで。そんなにやってたのかなと思うけどね。肩を並ばせてもらうのは光栄なこと。テレビで見たことしかない。神様みたいな存在」と恐縮。土俵人生22年、「ご褒美じゃないけど、あまたいる力士の方々に並ぶのは不思議」と、笑みを浮かべた。
その後3連敗したが、12日目に希善龍(木瀬)を肩すかしで退けて“大鵬超え”の873勝。満身創痍(い)の体で頑張る理由は家族の存在だった。
お相撲さんにとっては最も体調管理の難しい酷暑の場所。場所前に絵莉夫人と3人の子供が名古屋に来た。何よりの発奮材料になった。
15日間の体力を維持するのは39歳にとって容易ではない。そのスタミナ源は愛妻が手料理を作ってくれ、場所中も送ってくれる特製ギョーザだ。
ギョーザの皮に様々な食材をを詰め込み、ちゃんこ鍋に入れて食べられるようにしてくれるのが妻の愛。「クーラーで体が冷えるからね。とにかく体が冷えないように。バランスを考えて、しょうがとか肉とか野菜とか」。なくなれば東京からすぐに送ってもらい、パワーを回復させる。
「3人の子供を育てながら、俺の面倒まで見てもらっている。家族で戦っている」。愛妻に応えるのは、勝利を届けることだ。
夏場所は再入幕したが巡業で古傷の右膝を悪化させた影響もあり4勝11敗と負け越した。24歳時、貴乃花親方(45)=元横綱=の最後の取組相手を務めた。それから15年、まだ土俵で気を吐くレジェンド。家族の支え、記録への夢を持ち、史上高齢の再入幕をあきらめない。(デイリースポーツ・荒木 司)