【芸能】安室流お別れ「ラスト」強調せず、涙もアンコールも無し…自然体のまま引退
27年目のデビュー記念日となった16日をもって、安室奈美恵さんが芸能界を引退した。最終日には、沖縄県宜野湾トロピカルビーチで開催された花火大会「WE LOVE NAMIE HANABI SHOW」をお忍び観賞した安室さんの、歌手人生最後の3日間を沖縄で追った。
秋の気配が漂う東京から訪れ、まず感じたことは尋常ではない熱さ。もちろん、連日30度に達した気温のことではない。島全体を包み込むような“アムロ熱”だ。那覇の町を歩くと、すれ違う人々の半数近くが、安室さんの歴代ライブの記念Tシャツ姿。16日には新たなデザインのTシャツを着るファンが急増した。15日のラストライブで安室さんが着用していた、「I LOVE music!」と書かれたものだ。
土産店が立ち並ぶ繁華街・国際通りを歩くと、店内のBGMは必ずといっていいほど安室ソング。ほかのアーティストの楽曲を耳にすることは、ほとんどなかった。著名人のサインが多数飾られている飲食店では、安室さんのサインだけが額縁に入れられて特別扱い。日付は「2012・9・18」とある。台風で中止となった20周年記念ライブで、帰郷していたときに書かれたものだった。地元新聞社の企画展や沖縄市での展示会は、入場待ちの行列が途絶えることがなかった。
15日のライブ会場には、安室さんの大ファンを公言する著名人の姿もあった。客席は号泣するファンであふれていたが、主役に寂りょう感は皆無。気心知れた仲間との“宴”を、心の底から楽しむような姿が印象的だった。サプライズゲストの山下智久とは、コラボ曲「UNUSUAL」を披露。歌唱後に身を寄せ合って、山下の腕に触れながらポーズを決めたときには、少し恥ずかしそうな表情を浮かべた。
締めくくりに選んだのはラストツアーと同様に、小室哲哉氏と16年ぶりのタッグとなったアルバム「Finally」の収録曲「How do you feel now?」。数奇な運命で、同じ年に引退する恩人への、リスペクトが感じられた。歌い終えると、「今日、この会場に来てくださった皆さん、本当に本当にありがとうございましたぁ~」と感謝を伝えて、ステージを降りた。アンコールなし、本格的なMCもなし。名残惜しい、という表現とは真逆で、またすぐに会えるからと勘違いしそうなほど、“あっさり”とした幕切れだった。
終演後、会場の入る施設内で行われた打ち上げには関係者100人ほどが集まり、ファンの寄せ書きフラッグが飾られた。安室さんは白いTシャツに、黒のチュールスカートを合わせた私服で参加。ここでもお別れスピーチをすることはなかったが、出演者とは談笑を交わした。会場の沖縄コンベンションセンターを離れる際には、乗り込んだ車の窓を開け、待ち構えていたファンの大歓声に手を振って応えた。
さよならステージでは笑顔を貫き、涙はなし。最後の最後まで『ラスト』を強調することはなく、自然体のまま、安室流で芸能界から身を引いた。(デイリースポーツ・丸尾匠)