桧山進次郎氏が持つシーズン代打安打の球団記録にあと「１」と迫りながら、「左手第５中手骨骨折」で無念の離脱となった阪神・原口文仁捕手（２６）。普段の打撃練習から己が持つ“信念”を貫き、代打打率・４２３という数字を残した。

　原口には今季開幕してから、試合前のティー打撃、フリー打撃で一貫して取り組んできたことがある。それは通常の試合用バットよりも重い、マスコットバットを必ず使うということ。ただ、それだけでは他の選手も当たり前にやっていることで、何の特異性もない。原口の場合は、マスコットバットしか使わない。

　一応、試合用バットと２本を打撃ケージに持っていくも、脇に立てかけたまま使用することはない。チームでは昨年、振る力を高めるために練習でマスコットバットを使うことが推奨されてきたが、「今年からは疲労も考え、選手個人に任せています」と平野打撃コーチが話す通り、選手それぞれに一任されている。

　マスコットバットしか使わない理由を「僕だって（普通のバットを）使いたいですよ」と話した原口。それでも、自分の信念を曲げることなく練習では重たいバットで振り込み、試合で結果を残してきた。

　５回に１回の成功でも評価される代打稼業。それほど難しい仕事で、４割超えの成功率を記録した原口はまさに異端。驚異の勝負強さの秘密は、ずしりと重いマスコットバットに隠されてるかもしれない。現在は鳴尾浜で焦ることなくリハビリを行っており、「できる範囲のことをしっかりやって、痛みが引くのを待ちたい。しっかり治します」と表情は明るい。復活が楽しみだ。（デイリースポーツ・山本航己）