【野球】ソフトバンク川島のイタズラ CS最終S進出の裏にあった“イイ話”
「心臓が飛び出るくらい、試合が始まる前から緊張していた」と工藤監督が話したほどの緊迫感の中で行われたCSファースト第3戦。そんな中、ベンチが笑いに包まれたシーンがあった。
ソフトバンクの甲斐が打席に向かうシーンだ。ホームチームの打者が打席に立つまで、その選手が自ら選んだ登場曲が流れるのだが、1打席目でモーニング娘。の「LOVEマシーン」が大音量で響き渡ったのだ。普段の使用曲ではない。まさかのアイドルソングに甲斐は苦笑いを浮かべ、うつむきながら打席へ歩を進めたのだった。ただ、この打席、余計な力が抜けたのか、きっちりと安打を放ってみせた。
続く2打席目も同じくモー娘。で「恋愛レボリューション21」ではないか。気まずそうな甲斐。一方、ベンチで一番大爆笑していたのがベテランの川島慶三内野手だった。
シーズン中も同様の“イタズラ”を、たびたび仕掛人として暗躍してきた。甲斐からは「勘弁してくださいよ」と泣きつかれるが、ベンチの盛り上がりに一役買うのだから止められない。
ところで、なぜこの日はモー娘。だったのか。
日本ハムの先発は杉浦だ。ん?あ、そうか!杉浦の嫁さんは元モーニング娘。の紺野あさ美ではないか。
試合後、川島に直撃すると「そうですよ」と選曲理由をあっさり認めた。なるほど。じつは杉浦の動揺を誘うための作戦だったのか!
「いや違いますよ。ちゃんと杉浦には前もって話をしましたよ。モー娘。を流すけど気にしないでねって。彼とはヤクルトの時に一緒にプレーしていたから。それに試合の中で、相手に失礼はあってはいけないでしょ」。
川島はそんなケチな男ではない。普段からムードメーカーでちょっと悪ノリ好きだが、野球に関してはとにかく真面目。「野球に失礼がないように」をモットーにしている。
「出番がある、なしで変えてはいけない。僕は準備は怠ることはしない」。CSファーストも第2戦までは打席の機会がなかったが、第3戦で途中出場するときっちり2安打を放ってみせた。なかなか出来ることではない。いかにも川島らしい活躍だった。
CSファイナルの舞台はメットライフドーム。敵地のみの戦いになる。再び本拠地に戻るには難敵西武を倒して日本シリーズに進出しなくてはならないが、川島のようなベテランがいるソフトバンクのムードは今、最高潮に達している。球団初の「下剋上」へ。チームも準備は整っている。(デイリースポーツ特約記者・田尻耕太郎)