【野球】広島カープ3連覇に貢献したムードメーカーの正体は…?

 3連覇を達成し、CSファイナルSで巨人を下し、2年ぶり8度目の日本シリーズ出場を決めた広島に欠かせない選手がいる。入団6年目の上本崇司内野手だ。プロ入り後にスイッチヒッターに挑戦し、今春のキャンプでは外野手にもチャレンジ。代走、守備要員として、またムードメーカーとして今季のチームを支えてきた。

 直近で最も輝いたのは、巨人とのCSファイナルS・第2戦(18日、マツダスタジアム)だった。八回2死から松山が四球を選び代走に指名された。続く代打新井の5球目にスタートをきり、二盗を決めた。直後に新井の左翼線適時二塁打が飛び出し同点。なおも2死一、二塁から菊池の勝ち越し3ランが飛び出し日本シリーズ進出に王手をかけた。

 お立ち台にはど派手な活躍の新井、菊池が上がったが、八回2死から四球を選んだ松山、代走で二盗を決めた上本の存在なくして勝利は語れない。背番号0は「これが仕事。絶対走れというサインだった」と、歓喜に沸くグラウンドを背に胸を張った。

 上本を初めて取材したのは、プロ入り1年目の2013年だった。広陵時代の2年時には現在チームメートの野村らとともに夏の甲子園に出場し、準優勝メンバーとして活躍。明大でも1年春から持ち前の守備力でレギュラーとして出場した。高校、大学と野球の名門校で育ったドラフト3位は、打力不足で2軍で鍛錬を重ねていた。

 声をかけるとハキハキと受け応えし、好印象を受けた。同年のフレッシュオールスターに出場が決まり、カープから出場する選手の集合写真を頼むと、鈴木、高橋、戸田の後輩に「行くぞ」と声をかけ選手を集めてくれた。そのキャプテンシーに将来のカープにとって大事な選手になることを確信した。

 それがどうだろう。オフのファン感謝デーでは仮装をしてファンを笑わせる。マツダスタジアムで雨天のため試合が中止になればダイヤモンドを一周してホームにヘッドスライディング。今年の優勝決定試合でも最後にマイクを握ってファンに万歳を促していた。日本シリーズ出場が決まった19日の試合直後の勝利の儀式のジャンプでも一人グラウンドに尻もちをついていた。チーム内ではイジられキャラが定着している。明るい性格でムードメーカーと解釈すればいいのだろうが、どこかルーキーイヤーに感じたイメージと違っていた。

 しかし、上本の正体は、芯がしっかりして野球に対する姿勢も真剣そのもの。試合前、相手の練習を見る目は鋭かった。阪神にいる兄・博紀の話題を振ると「兄は兄ですから。僕は関係ない」とキッパリという。新人時代の13年に2軍で指揮を執っていた内田順三2軍監督(今季は巨人2軍打撃コーチ)は「野球勘といういのかな。われわれが教えることができないものをもっている」と言っていたのが思い出される。

 打撃力に課題は残るが、自慢の俊足と守りで今季は3連覇に貢献した。明るいムードメーカーとは対照的にプレーは堅実でいぶし銀の活躍を見せる。イジられキャラではあるものの、伝統校の高校、大学で培った“野球勘”は、CSファイナルS・第2戦の盗塁で証明した。二面性を持つ背番号0の今後に注目したい。(デイリースポーツ・岩本 隆)

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