【スポーツ】内村満身創痍でピンチの体操男子 王座防衛へ鍵は白井の不動心と応援力
体操の世界選手権がカタール、ドーハで開幕した。団体連覇の懸かる日本男子は26日に行われた予選ではミスが目立ち、ロシア、中国に次ぐ3位通過。決勝に得点は持ち越さないが、予選では首位ロシア、2位中国に約5点差をつけられ、連覇に向けて不安が漂った。
大黒柱の内村航平が9月に痛めた右足首の影響で、個人総合出場を断念。床、跳馬を回避(予選では平行棒も)を強いられている。内村に次ぐベテランの田中佑典も8月に痛めた右肩の影響で、得意の平行棒と鉄棒のみでの出場となっている。予選のあん馬では、内村、谷川、萱が3人連続で落下するなど、苦しい戦いを強いられた。
ただ、そんな中で存在感を見せたのが、白井健三だった。全6種目で演技し、最初の種目のつり輪から大きなミスなく演技を通し、得意の床、跳馬ではしっかりと得点源となった。あん馬では最終演技者として、しっかりと構成を通しきり、落下が続いた負の連鎖を断ち切り、予選を締めくくった。
13年の初めて代表入りした五輪も含めて6度目の世界舞台。どんな状況でも安定した演技を披露できるその不動心は、もはやチームに欠かせない。もう1つ、決勝で武器となりそうな白井のスキルがある。応援力。大会前の会見では、「自分はチームの?」という質問に「メガホン」と答えた。単なる応援ではなく、演技中に各選手の気をつけなければいけないポイントを的確に指示できるという。「練習中からこの選手はここに気をつけてるとか意識してみてる。試合中にあれだけ声を掛けられるのは自分だけ」と、胸を張る。内村も「すごく聞こえてくるし、的確。ありがたい」と、その効果を認めるほどだ。予選の内容を含めて、チームを鼓舞できるか。
決勝は29日。充実期を迎えているロシアと、リオ五輪以降に世代交代に成功した中国との王座争いは、し烈を極める。リオ五輪王者としての意地を見せられるか。若きエースの演技と“声”が、勝負の鍵を握る。(デイリースポーツ・大上謙吾)