【スポーツ】「ソフトなトライが多すぎる」NZに与えた10T…日本代表の課題分析
世界ランキング11位のラグビー日本代表は、3日に同1位のニュージーランド代表に31-69で敗れた。同代表と6度目の対戦で過去最多の5トライ31得点を記録した一方で、10トライを奪われ、失点は前回の54点を上回る。若手中心の相手に戦前、ある選手は「付け入るスキはあると思う」と話していたが、力の差は歴然だった。これは善戦なのか。それとも惨敗なのか。2019年9月20日開幕のW杯日本大会で、8強入りという大目標がある。浮き彫りとなった守備面の課題を選手の言葉から分析する。
プロップ稲垣は試合を通じての得点経過の印象をこう話した。
「トライを取れるシーンはあったけど、そこを逆に一気にトライまでもっていかれた。スコアを伸ばすチャンスで相手に取られてしまうと、倍以上の感覚で、スコアが伸びていく感覚になる。いつの間にこんなに開いたんだろうという…」
奪われた10トライ。フランカーのリーチ主将は「(相手に与えた)ソフトなトライが多すぎる」と問題視した。試合を通して劇的に奪った日本のトライ。逆にニュージーランドは、容易にトライを重ねたように見えた。“ソフトなトライ”。「ちょっとしたミスタックルからのトライや、自分たちがボールを落として1秒で相手が拾ってトライにされた」と説明した。
“ソフトなトライ”の中に多かったのはミスや反則から逆襲を食って奪われたものだった。選手が口をそろえた1つの課題があった。「ブレークダウンの精度は(試合前)1週間やってきたけど通用しない部分もあった」(SO田村)。「ブレークダウンで圧倒された」(WTB福岡)
ブレークダウン、つまりタックル成立後の、密集でのボールの奪い合い。攻撃側は早くボールを出すことを目指し、守備側はそれを遅らせるか、ボール奪取を狙う。その攻防で優位に立てずミスも出た。何度も見られたシーンはタックルした相手選手が標的をつかんだまま離さず、思うような球出しは封じられた。ボールを奪われ、トライに結びつけられたプレーもあった。
フランカーの姫野は「ホールディング(の反則)に近いけどホールディングじゃない。ブレークダウンのグレーなところ。レフェリーがアプローチにきたらすぐにやめていた」と相手のうまさを指摘する。
レフェリーにアピールしたリーチ主将だが、「なかなか自分の予想通りいかなかった」とこれも不発。グレーでも、反則にならなければそれは白。稲垣は「あれに対してどう対処するか、最後までうまくいかないまま終わってしまった」と振り返る。
ニュージーランド代表はベンチ入りメンバー中8人が初キャップ。姫野が「(相手は)特別なことはしていない。瞬時の判断力、パス、キック、ラン1つ1つのクオリティーが高い」と言うように、レベルの高い基本技術をベースに、瞬時にスキを見極めて突いてくるプレーで容易にトライを重ねた。
稲垣は「(相手は)我々がやりたい最高峰のプレーをやった。1つのスタンダードになりました」と話す。体格の劣る日本代表が目標とできる、フィジカルに頼らないラグビー。目指すべき世界最高峰の頂を感じたことが、最大の収穫だった。
「やっているラグビーは間違いないと思う。1つ1つのプレーを遂行する時の質を上げていきたい」(姫野)
「チームとしての土台はできていると思う。そこにどれだけのディテールを付け加えられるか。攻めて攻めて最後にワンミスで一気にトライを取らせない守備。ディテールを詰める段階」(稲垣)
ジェイミーHCは「W杯で戦うレベルにはまだまだチームの強化が必要」と言う。“基本技術を上げる、ブレークダウンの質の向上、試合運びのうまさ-。W杯まで10カ月余り、一朝一夕には習得できない世界最高のレベルを、追求していく。(デイリースポーツ・鈴木創太)