【野球】番長ジュニア聖地切符で“父超え”目指す
来季からDeNAの1軍投手コーチを務める三浦大輔氏の長男で平塚学園の右腕・三浦澪央斗(れおと)投手(2年)が着実に成長を遂げている。11月24日の横浜隼人との練習試合では1失点完投勝利。新チームで背番号1をつかむべく、アピールを続けている。
自然と野球の道へ進んでいた。ファンから“ハマの番長”として親しまれた父を、三浦は「生まれたときからずっと行っていた」と球場で応援。マウンドで躍動する背中はかっこよく映り、知らぬ間に「やるなら野球」と触発されていた。
テークバックから投球に入るまでの動作は父の投球フォームとそっくりだ。「中学校のときに似ているなって言われて。スタート地点がモデルとしていたというか、それを見て投げていたので」。幼いころは、ちょっとしたアドバイスで成長を後押ししてくれた。
父の知名度から注目を浴びることに苦しんできたが、いまは「運命なので」と割り切れるようになった。高校入学後は都合がつけば練習試合にまで通ってくれることに対し、「頑張ろうと思います」と力に変えている。
最大の武器はスピンの利いた直球だ。自身年内最後の登板となった11月24日の練習試合でも威力を発揮。最速130キロながら、質の高いストレートで同じ神奈川の実力校・横浜隼人打線をフライアウトに打ち取る場面が目立った。持ち味に気づいたのは、1年ほど前の練習中。球質のデータを計測できるボールを使用し、「回転数がよかった」と自身の特性を実感した。
体格も技術も、一歩ずつレベルアップしている。両親から「いい経験になるよ」と送り出された人生初の寮生活。1日1キロ以上の米を食べる食事量に「びっくりしました。お茶わんの大きさに」と当初はうろたえながら、最初の1カ月ですっかり慣れた。入学時から身長や体重の変動は少ないものの、がっしりとした理想的な体形に近づいている。
自己最速を10キロ更新するなど力をつけている右腕に対し、八木崇文監督は「エース候補の1人。しっかり一本立ちしてほしい」と期待を寄せる。投手陣は現状、下級生を含めて10人ほど。三浦は「下半身を強くしてコントロールをよくする」ことに加え、今秋からはさらなる球速アップとフォークの習得に励んでいる。
「ちょうど家に帰っていたので、普通に聞いて。いつかは戻りたいと言っていたので、よかったんじゃないかなと」と、父が来季から再びユニホームを着ることにも刺激を受けた。DeNAの主戦場でもある横浜スタジアムへの思いはよりいっそう高まっている。
2年前には父の現役最終登板で始球式を務めた。「前々から『引退試合では始球式して』と言われていた」という大役を果たして以降、父が活躍してきたマウンドに立ったことはない。「最低ラインとしてハマスタは行きたい」と激戦区で勝ち抜くことを誓った。
もちろん、その先にある聖地も見据えている。「絶対、甲子園には出たいですね。(父は)出ていないです。出たら自分の勝ちなんで(笑)」。今秋は神奈川大会2回戦敗退と来春センバツの出場は絶望的。“番長ジュニア”が来夏のラストチャンスで、“父超え”を成し遂げてみせる。(デイリースポーツ・佐藤敬久)