【芸能】西野カナが愛された理由…大学時代の友人と固い絆、一般感覚を大切に
恋愛ソングのカリスマとして人気の歌手・西野カナが、3日の横浜アリーナ公演を最後に、無期限活動休止に入る。昨年がデビュー10周年で、今年3月18日の誕生日で30歳。公私の節目で大きな決断を下した。音楽担当記者として度々取材してきた西野に対しては、“一般感覚”を大事にするアーティストだと強く感じている。それがファンに愛されてきた理由だとも思う。
「トリセツ」「あなたの好きなところ」などのヒットを飛ばし、NHK紅白歌合戦に9回出場した国民的シンガーが、転機の曲に選ぶのは、デビュー2年目にリリースした5枚目シングルの「遠くても」。過去のインタビューでは次のように語ってくれた。
「赤裸々な実体験を基にした作詩は初の試みでしたが、すごく反応があってうれしかった。ここから聞いてもらえる人が徐々に増えていったと感じています。恋愛の曲を軸に音楽を作っていくスタイルも確立されました」。自身の過去をさらけ出した歌詞でつかんだ手応え。ブレークのきっかけは、ファンとの共感だった。
芸能界という華やかで特別な世界に10年間も身を置きながら、西野が“一般感覚”を保ち続けられたのは、親友の影響が大きいように思う。大学時代にデビューしたが、当時の仲間とは今も絆は固く、一緒に大好きな旅行をするだけでなく、作詩に行き詰まると助けを求めることもあった。「『今こんな曲書いてて、私こう思ってるねんけど、同じような感覚ある?』とか電話で聞いて、ダメやったら書き直します」。友達の枠を超え、陰のプロデューサーとして頼っていた。
女子会を楽しむこともしばしば。「話題は『仕事』『恋愛』『昔話』の3本立て。作詩をしているときに、ふと思い出すこともありますね。みんな違う業界なんですけど、バリバリ働いててすごい。出張でアルゼンチンに行ってたりして。『何や、そのキャリアウーマンの感じ!?』って思いますよ」。トップアーティストの証である東京ドームでの公演歴もありながら、“一般人の日常”にすごさ、驚きを感じることを隠さない。
かつて宇多田ヒカルは「人間活動に専念したい」という理由で、芸能活動を休止していた時期があった。10年間、第一線を走り続けてきた西野も、同じような考えなのかもしれない。有名人が故に特別扱いされ、行動が制限されることもある。持ち味である“一般感覚”を失わないためにも、芸能界から1度離れてみるタイミングなのだろう。
活動休止発表前の昨年12月29日、紅白リハの取材では、「30代の10年を使って、南米を全部回りたいです。チリやアルゼンチンの絶景を」と、今後の計画とも取れるコメントを残した。『人間・西野カナ』が旅先で、女子会で、自由な暮らしで感じたことを、『歌手・西野カナ』が歌に込める日が待たれる。(デイリースポーツ・丸尾匠)