【野球】巨人キャンプで見た原監督の「魔力」デイリー編集長が“証言”
やっぱり巨人は手強いのだろう…。阪神宜野座キャンプを訪れる前に“立ち寄った”宮崎のGキャンプ。FAで広島から丸佳浩、西武から炭谷銀仁朗を獲得、さらにメジャーの大物・ビヤヌエバと守護神候補・クックを獲った。前オリックスの中島宏之や元メジャー・岩隈久志は付録と言えるほどの大補強だけにそう感じて当然なのだが、実際に現地に行って見たら『最強にして最大の補強』が別にあった-と実感した。
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それは、2015年以来の現場復帰となった指揮官・原辰徳に他ならない。呼び捨てにするのも憚られる実績を持つ名将だから、異論はないはず。過去2度の監督時代に7度のリーグ優勝、3度の日本一、そして2009年WBC世界一…。この数字だけを取ってみても、長い巨人の球団史に燦然と輝く三原脩、水原茂、川上哲治、そして“ミスター”長嶋茂雄の歴代監督と何ら遜色ないのだ。
4年連続優勝を逃した2015年オフ、責任を取る形で辞任して以来、3年間の“充電期間”を経て3度目の現場復帰となったわけだが、その姿は還暦超えの60歳とは思えないほど若々しかった。やや縁の厚い眼鏡をかける時のみ年齢を感じさせたが、その他はあの“若大将”のまま。さらにパワーアップして帰ってきたと思えた。
原監督が現役時代の1994年当時の担当から見て、この25年の月日は「指揮官・原辰徳」に様々なものを与え続けた期間だったのだろう。メイングラウンドの通称“原タワー”と呼ばれる高台からフリー打撃を見つめる指揮官の下に、評論家諸氏がひっきりなしに訪れ挨拶をする。その一人一人と握手し、言葉をかわす姿に、底深い『人間力』が浮かんで見えた。
練習が落ち着いた頃合いを見計らって監督に挨拶すると、あの笑顔と共に右手が差し出されてきた。昔はこれにコロッといかれたものだが、今回もやはり魅了された。不思議な“魔力”があの手にこもっているなら、例のグータッチが大きな意味を持つのもわかる。古い担当ですらこうなのだから、年の差の離れた今の報道陣は言を待たないだろう。
実際、前メニューが終了した後の“囲み取材”を真後ろから見学したが、質問に丁寧に答えていく監督と担当記者の間には妙な一体感のようなものがあった。自身の現役時代の事例を出して説明する際には大爆笑が起きるほど、その話術に取材の側が引き込まれていた。昨年急逝した元阪神監督・星野仙一氏は常に「マスコミも戦力」と話していたが、原監督はすでにこれを掌中にしていると言っていい。
巨人の宮崎キャンプは、2年連続MVPの丸加入もあって賑やかだった。新しく入閣した宮本、元木両コーチの明るさも内外に溢れ出ていた。もちろん、ただ単に明るいだけでなく、原監督の言う「個人商店の集まり」らしく、個々が高い次元の競争心を持ってキャンプに取り組んでいる様子が手に取るようにわかった。
矢野新監督の阪神を軸にセ・リーグを見るものとして、今年の巨人は実に眩しい。あの指揮官が発する光を遮るものは…。それが沖縄・宜野座にあるのかどうか、そのうち見てこよう。(デイリースポーツ編集長・中村正直)