【野球】ヤクルトのキャンプ地“マウンド改革” ベテラン右腕の要望通った
昨年とはひと目見て印象が違った。ヤクルトが1軍キャンプを張る沖縄県浦添市の「ANA BALLPARK浦添」のブルペンは、誰も投げていない時でも明るくなった気がした。原因はマウンドの土だ。
7人が同時に投げられる仕様。昨年までは、黒土が6つ、赤土が1つだった。それが今年は黒が4、赤が3に変更。だから視覚的にずいぶんと明るく感じたのだ。
「選手の要望があったみたいだよ」とチームスタッフから聞いた。声をあげたのは誰なのか探してみると、昨季のリーグ最優秀中継ぎ投手・近藤一樹投手が、シーズン後に変更が可能なのか打診していたことがわかった。
「シーズンの反省点をいろいろ球団と話した時に『うまくいけばできるかも』と言われたんです」。なぜ変更を望んだのか。理由は体作りの選択肢を増やすことにあった。
ヤクルトの神宮球場も含め、現在はほとんどのチームの本拠地マウンドは赤土。一般的に赤は硬い。それだけ体に対しての反動もある。近藤は「黒土で投げ込んで2月の体ができたとしても、3月に赤土になった時に疲労感がすごかった」と説明する。昨年は開幕前最後のオープン戦の相手が日本ハムだった。普段は試合をする機会が少なく、かつメジャーに最も近いと評される赤土マウンドの札幌ドーム。遠征後は、体の張りに苦労した投手が多かったという。
ならば、2月から赤土により慣れる環境ができないものか-。そんな経緯で、ブルペン改造の提案に至った。「キャンプ中にそういうことができたら、チームもいい状態で開幕を迎えられるかもしれない。(投げ込みの)強度が上がるにつれて、赤を増やしていった方がいい。そうやって足を作っていった方が、抵抗なく開幕からいいスタートを切れるんじゃないかな」と青写真を口にする。
もちろん、黒と赤のどちらを選んで仕上げていくのかは、その投手の考え次第。ただ“引き出し”は、多いにこしたことはない。近藤はプロ17年目の昨季、35歳にして12球団最多の74試合に登板。キャリアの中で度重なる故障も経験し、体のケアやトレーニング法などの知識の豊富さは、一目置かれている。
実際に投げてみて「しっかりとした赤土のマウンドになっていましたよ」と感想を話したベテラン右腕。キャンプ地ブルペンの“マウンド改革”が、4年ぶり優勝の一因となれば言うことはない。(デイリースポーツ・藤田昌央)