【スポーツ】カープに負けない!創立5年目の自転車プロチームが頂点を目指す
自転車のロードレースに国内プロリーグがあるのはご存じだろうか。3月16日に開幕する「Jプロツアー」(統括・全日本実業団自転車競技連盟)で、今季は18チームが参戦し、全国各地を舞台に10月14日の最終戦まで23大会が行われる。
広島に本拠を置くのが、中四国地区で唯一のプロチームである「ヴィクトワール広島」だ。2015年に設立され、8人の所属選手で構成。「ヴィクトワール」はフランス語で「勝利」を意味する。
監督を務めるのはチームを設立した中山卓士さん(29)。かつてベルギーなどを主戦場にしていたプロレーサーだ。海外でのロードレースの人気を目の当たりにし、「日本でももっとメジャーな競技にしたい」という思いから、チーム設立を決意。埼玉県出身の同監督が拠点に選んだのが広島だった。
「尾道市のしまなみ海道は“サイクリストの聖地”と呼ばれ、全国から愛好家が集まってきます。広島にサイクリングの土壌があることが一つ。もう一つは野球、サッカー、バスケなど多くのプロチームがあり、ファンの熱気がすごい。その2つが広島をホームグラウンドに決めた大きな理由です」。
地域密着型のチームとして地元企業を中心に80社以上から資金提供を受けて運営。広島でもロードレースの認知度は徐々に上がってきており、昨年7月に広島市西区の商工センター内の特設コースで開催された大会「広島クリテリウム」には約7000人が集まった。今年は1万5000人の集客を目指している。
チームも15年のJプロツアー初参戦から13位、13位、10位、8位とジワジワと順位を上げており、今季は6位以内をターゲットに置く。各大会ごとに違いはあるが、1チーム3~5人の選手が出場し、各選手の獲得ポイント(順位)によってチームの順位が決まる。得点獲得を目指す選手とサポート役に回る選手(アシスト)とのチームワークも大切だ。
今季から主将を務める藤岡克磨選手(27)はロードレースの世界から一度離れ、ボートレース選手を養成する「やまと学校」に入学した経験を持つ。17年5月の競技復帰と同時に広島に加入した。「監督も選手もみんな仲が良くて和気あいあい。ファンの人たちも声をかけやすいところがチームの良さ」と語る。
昨季優勝の宇都宮ブリッツエンから今季広島に加入したのが馬渡伸弥選手(24)。昨季は故障もあって他の選手のアシスト役に回ることが多かった。「エースとして走りたい気持ちが強かったので移籍した。今季は個人でも表彰台の真ん中に立ちたい」と優勝を狙う。広島にとって大きな戦力補強となった。
中山監督は「いずれは日本一になって、海外で活躍できる選手を輩出したり、チームとして海外の大会に参戦したい」と語る。そして、もう一つの目標が「日本一愛されるチームになる」ことだ。警察や学校と連携して安全教室を開くなど地域への貢献活動も積極的に行っている。
今季、広島では4大会開催される。地元ファンの熱い声援が、勝利を目指して懸命にペダルを踏む選手の背中を後押しする。カープ、サンフレなど実力のあるプロチームがひしめく広島の地にあって、自転車レースでも存在感を示したい。
(デイリースポーツ・工藤直樹)
◆ロードレース 主に舗装された公道をコースにする自転車レースで200キロを超える長距離を走ることもある。タイムを競う「タイムトライアル」、市街地に設けた周回コースを走って着順を競う「クリテリウム」、登り坂のみで構成されたコースを走って着順を競う「ヒルクライム」などがある。