【競馬】開業した新規調教師から学ぶ基本の大切さ

 1日にJRAでは7人の新規調教師が開業した。今回は記者が取材の中心としている美浦トレセンで開業した3人を紹介したい。

 まずは加藤士津八調教師(34)。父は現役のトレーナーであり、騎手時代には1985年ダービーをシリウスシンボリで制した加藤和宏調教師だ。加藤士師も父と同様に2003年にジョッキーとしてデビューし調教師に転身した。取材をして印象に残ったのは「ジョッキー時代から大事にしていたことですが、人との出会いを大切にしています」という師の言葉だ。

 仕事の業種は違うものの、記者もこれまで多くの人に助けられてここまで来られたと思っている。過去を振り返って、ひとりでは乗り越えられなかった壁もあった。その時に助けてくれた人がいた。その人との出会いは大切にしている。

 続けて師は「開業までの期間でいろいろな牧場を巡り、そこで多くの人に出会いました。その人たちの助けもあって、入厩馬には2歳馬もいます。ありがたいですね」と最近の出来事を例に出して感謝の気持ちを伝える。共感できる話だ。

 深山雅史調教師(42)は05年に伊藤正徳厩舎に厩務員として入り、調教師になるまで同厩舎で仕事をしてきた。師が語ってくれたのは、師匠である伊藤正徳元調教師の言葉だ。「先生からは、経営者であると同時に職人でもある、という言葉をいただきました」と前を見据える。厩舎経営を軌道に乗せなければならない。ただ、そこにばかり目を奪われてしまうと、大事にものを見失ってしまう。

 いろいろなものがめまぐるしく変わる今の時代。その流れに沿った考え方、生き方をしていかなければ取り残されてしまうこともある。ただ、先人の言葉を胸に刻みつつ、自分なりの道を歩むこともできる。新聞記者の仕事もここ数年で大きく変わった。昔の先輩方の教え通りに仕事をしても成功するとは限らない。ただ、その教えを踏まえた上で、今の仕事に従事することで新たなものが生まれる可能性はある。

 最後に紹介するのは稲垣幸雄調教師(41)。03年7月に阿部新生厩舎で厩務員となり、同年10月に萩原清厩舎に転厩して18年度の新規調教師免許試験に合格した。師は「馬の持っている筋肉をしっかり正しく動かせるようにすることを大前提としています」という話が印象深かった。要するに基礎の部分が大事ということだ。

 何事も基本が重要。これは記者の仕事にも言えることだし、どんなものにも通ずる。基本ができていれば応用が利き、その先の幅が広がる。土台がもろければ、いくら豪華な建物を建てたとしても崩れてしまう。記者も過去に基本を怠り、苦い思いをしたことがある。

 美浦で新規開業する調教師の話を聞いて、自分に置き換えて共感する部分はあった。ちょっとした取材ではあったが、考えさせられるものだった。(デイリースポーツ・小林正明)

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