【野球】トミー・ジョン手術の広島・高橋昂也、復帰への第一歩「少しずつ」
広島の高橋昂也投手(20)が、復帰へ向け一歩を踏み出した。2月に「左肘関節内側側副靱帯(じんたい)再建術」と「尺骨神経剥離術」を受けた。いわゆるトミー・ジョン手術だ。今月15日にはギプスが外れ、肘の可動域を広げるなどのリハビリを開始。復帰まで1年以上を要するが、前だけを向いて地道に歩んでいく。
小さくても確かな一歩だ。大野練習場の室内で、高橋昂は左手に軽いダンベルを持ち手首を動かした。左腕を覆っていたギプスはもうない。“重い鎖”をようやくほどかれ、表情は明るい。「15日に取れました。ちょっと細くなったかもしれないけど、あまり分かりませんね」。両腕を前に出して比べながら言葉を紡いだ。
2月14日。左肘にメスを入れた。通称トミー・ジョン手術だ。高校時代、肘に違和感を覚えたことはあるが、昨秋はそれが強くなった。最初はPRP治療を受けた。復帰まで1年以上を要する手術より短期間で復帰できる再生治療で、ヤンキース・田中もこれで手術を回避した。だが、思っていたような効果は得られなかった。1月の自主トレが始まってもキャッチボールすらできない。「痛かったらどうしようもない」と手術を決心した。
術後は絶対安静が原則。最も気をつけたのが食事だった。太りやすい体質だけに、体を動かさない時間が増えれば体重は増加の一途をたどる可能性がある。「脂っこいものを食べなかったり。箸は右手で使えるようになりましたよ」。注意を払ったことで増えるどころか「3キロやせました」と苦笑いした。
床田の存在が励みになった。17年に同じ手術を受け、今季開幕ローテの一角を担うまでに復活した左腕。荷物整理のため大野寮を訪れた際には「どれくらいでどうなったか」など体験談を聞いたという。「安心したし手術に踏み切れた部分がある」と打ち明けた。
一般的に試合で投げられるまでには約1年半を要すると言われている。まずは硬くなった肘の可動域を戻すため、肘の曲げ伸ばしを行う。軽いスポンジのボールを使って投げる動作ができるのは、状態次第だが術後4カ月先になる。
「近くに目標をつくって、少しずつやっていきたい」。高橋昂は前を向いて、トレーニングルームに歩を進めた。もう一度マウンドに上がるために。(デイリースポーツ・市尻達拡)