【スポーツ】J1神戸、サンペール獲得で狂った歯車 リージョ監督と契約解除
J1神戸のフアンマヌエル・リージョ監督(53)が4月17日付で契約解除となった。神戸が推進する“バルセロナ化”の担い手として昨年9月に招聘された“マエストロ(巨匠)”は、わずか7カ月でクラブを去った。
三浦淳寛スポーツダイレクター(SD)14日の広島戦後に本人から辞任の申し出があったことを明かし、「成績に対して考えることがあったと思う。時間を掛けて話し合ったが意志が固かった」と説明した。ただ、監督交代について問われたFWルーカス・ポドルスキは「驚きはもちろんある。クラブの意向もあって、みんなで成長していければ良かったが、うまくいかなかった」と発言し、事実上の解任であることに含みを持たせた。
7試合を終えて3勝1分け3敗の10位は可もなく不可もなくといった成績だが、決して職を辞するほどでもないと感じる。FWダビド・ビジャを加えた今季、総得点はリーグ2位タイの12得点を叩き出すなど、攻撃では一定の成果も現れていた。
歯車が狂い始めたのは、7人目の外国人選手となるMFセルジ・サンペールの獲得だった。悪い選手ではない。プレーのリズムはイニエスタとの相性も良く、バルセロナ育ちであることに頷ける。だが、守備の強度は低く、負傷で試合から遠ざかっていたこともあり、運動量も上がらず、中盤の底を担う選手としてはボールを失う局面も散見された。「サンペールはどうなんでしょう」と、実力に疑問符を投げ掛けるクラブ関係者もいた。失っていた試合勘を取り戻すために、ルヴァン杯で起用を重ねる方法もあったが、リージョ監督はリーグ戦での起用にこだわり続けた。
サンペールを起用することで5人の外国人出場枠が埋まり、開幕から3試合2失点と安定感を示していた韓国代表GK金承奎(キム・スンギュ)がベンチ外へ弾き出された。運動量の劣るMFイニエスタ、FWビジャ、ポドルスキにサンペールを加えたことで、周囲の守備に対する負担はさらに増し、直近3試合で9失点。指揮官の命取りとなった守備の破綻は必然だった。
クラブの浮沈は吉田孝行監督の手腕に託された。新指揮官は「ハードワークしないとメンバーから外す」と選手に伝え、「外国人を5人使うとも限らない」と話した。ポドルスキ、サンペールらも含め“聖域”を設けない競争を促す考えだ。
“バルサ化”の試みに疑問を差し挟むつもりはない。ただ、それは当然、一朝一夕に成し遂げられるものでもない。加入後4度目の監督交代を経験したポドルスキは「コンセプトがあっても監督が代わるとやり方が変わる。簡単なことではない」と嘆いた。“バルサ化”の究極目標へ、継続性が最優先されることに疑いの余地はない。(デイリースポーツ・山本直弘)