【野球】原巨人、今年の漢字一文字は「陽」…元木コーチが象徴
今年の巨人を漢字一文字で表現すると「陽」という一字が当てはまるのではないか。開幕から明るい雰囲気で戦う姿が垣間見える。3月29日の広島開幕戦前、原監督はミーティングで選手全員に「陰にならずに、陽のチームになろう。少々、陰に入った時も立ち直るように。すぐに切り替えて、全員が陽に向けて戦うという部分で伸び伸びとね」と独特の言い回しで所信表明した。
監督、コーチが一体となって明るい体勢作りに励む原巨人。明るい象徴と言えば元木内野守備兼打撃コーチではないか。2005年に現役引退後、今季、初めてプロのコーチについた。
元木コーチのノックはとにかく明るい。右へ左へ鋭いノックを飛ばしながらも「オリャー」「イケイケー」「ヨッシャー」と声を出して、打球を浴びせる。キャンプ中には、愛情を感じさせる強いノックでバットを振り過ぎてマメができたほどだ。
コーチングの信念について聞いてみた。「声を出さないとね。野球は、楽しくやった方がいいと思うし」。存在感が陽の雰囲気を醸し出す。明るさを出して、選手と接することをモットーとしている。「(守備、打撃の)いいときの状態をすごく覚えといてあげたい。そこでコミュニケーションとって、明るくやってね。暗くなったってうまくならないし」と真剣に語る。
選手の接し方は現役時代の教訓を反面教師に接するように心がけているという。「現役時代の経験からやらされるのが、俺は嫌だった。自分のやったことを見てくれて、ぼそっと言ってくれて、悩みを聞いてくれる人の方が俺は好きだったしね。押しつけることは嫌いなので」。
その観点から悩んでいる選手がいたら、悩みを真摯(しんし)に聞くことを心がけている。「選手が悩み出したら、俺のやり方はこうやってというのもあって、ちょっと試してみたいなと試してくれてもいいし、自分に合ってたら、それは引き出しにいれとければいいわけだから。いろんな引き出しがあった方が強いから」。
16試合を終え、9勝7敗とまずまずのスタートを切った。「明るいだけでは勝てないけど、みんなの努力と今までやってきたことを、しっかりやったら勝てると思う。それを引き出してあげるのが俺らの役目だから。負けたっからって、あいつが悪いと言ってるのはコーチじゃないから。そんなのいらない」。現役時代「くせ者」と言われた“新米コーチ”は指導者としては明るく、真っ正直に選手と向き合い、力を発揮できる環境を作っている。(デイリースポーツ・水足丈夫)