【野球】ヤクルト・五十嵐の復活支える“ロケットボーイズ”の絆

 2位につける好調ヤクルトのブルペン陣で、五十嵐亮太投手(39)の存在感が光る。昨季限りでソフトバンクを戦力外になったが、古巣復帰した今季は開幕から8試合無失点投球を続けるなど、早や3勝。復活を支えるのが、かつてともに“ロケットボーイズ”と称された石井弘寿投手コーチ(41)の存在だ。

 「若い頃から自分を見ていて、忘れていたことを思い出させてくれる」。古巣で10年ぶりの白星を挙げた5日の中日戦。五十嵐がしみじみと石井コーチへの感謝を口にしたのが印象的だった。ここ数年は「なかなか答えを見いだせなかった」という投球フォーム。その再構築を、まさに二人三脚でやっていた。

 1軍スタートのキャンプでは、右ふくらはぎの張りで2日目から別メニュー調整に。石井コーチは最初のキャッチボールを見た時から、上半身に頼った投げ方をしていると感じていた。ただ、五十嵐にもプロ22年目のキャリアがある。「どこかのタイミングで言わないと」と慎重に時を見定め、1回2失点だった3月17日のソフトバンク戦後に「どう思ってる?」と切り出すと、問題点を理路整然と説明した。

 ヘルニアで苦しんだ腰などに負担がかからない投げ方を模索するうち、かかと重心となり、母指球に力が入らない。そこから頭の位置が後ろになり、左手も使えずに体が開く-。説明を聞き終え「一からみてください」と覚悟を決めた五十嵐に、石井コーチも「じゃあ、やろうか」と呼応した。

 マウンド後部の傾斜を逆に利用した投球練習。使えていなかったつま先を、タオルをつまんで鍛えるトレーニング。さまざまな練習法で下半身主導のフォームを追求していくと、球速は同じ140キロ台中盤でも、ホップするような球筋がよみがえっていった。

 開幕まで2週間を切った中でのベテランの決断。石井コーチは「すごく勇気がいる。聞く耳を持って、1カ月であれだけ違ったボールを投げるのはすごい」と称賛する。そのうえで「すごく期待していた。キャッチボールでも一球一球をすごく考えて“会話”しながらやる。もともと性格も明るいし、若い子もウエルカム。そこは青木と一緒。ブルペンでも一番声を出すし、彼の加入は投げることだけでなく、すごくいい影響がある。昔から勝ち運もすごく強い。チームの雰囲気が変わるのかな」と存在の大きさに目を細めた。

 10年の時を経ての再会。五十嵐も指導者となったかつての“相棒”に全幅の信頼を置く。「メチャクチャ信用してますよ。一緒に(現役を)やっていた時と引き出しの数が違う。『こんなに詳しかったっけ?』って。本人にも言っちゃいましたもん。話していて納得させられるし、ボールに表れる。僕は不器用で悪い方にすぐ戻っちゃうから『今のどうでした?』って逐一、聞いてますよ」と明かした。

 2000年代前半、剛速球でともにブルペンを支えた。選手とコーチ、関係性は変わっても、また力を合わせてチームの勝利に貢献できる。「自分の感覚が良くても、あの人が『う~ん…』という顔をする時があるんですよ。今はあの人が納得した顔をするボールを投げたいと思ってやっている」。楽しそうに五十嵐は言う。四十路に差し掛かり再び証明された“ロケットボーイズ”の絆。何とも幸せな邂逅(かいこう)に映った。(デイリースポーツ・藤田昌央)

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