【野球】阪神・近本の逆転3ラン呼んだ矢野監督の勝負手 代走・江越の思惑とは
25日のDeNA戦(横浜スタジアム)で、九回2死から起死回生となる近本の逆転3ランが飛び出すまでの阪神のベンチワークに焦点を当てた。1死一、二塁から鳥谷の左飛で二走・植田が三塁へタッチアップし、2死一、三塁となった場面。矢野監督は一走の北條に代走・江越を告げた。その狙い、相手バッテリーに与えた心理的な影響とは。指揮官の言葉とともに振り返る。
近本の劇的な逆転3ランを呼んだのは、ベンチの“勝負手”だったかもしれない。1点を追う九回。1死一、二塁から代打・鳥谷が放った定位置付近への左飛で、二走の植田が好判断で三塁を陥れた。ここで矢野監督が一手を打つ。
「ハマるかどうかは分からんかったけど、ベンチでも話していて、行こうかなと」
球審へ告げたのは一走の北條に代えて、代走・江越。その段階でベンチに残る野手はナバーロと中谷だけ。延長戦を想定すれば、駒が足らなくなる可能性もあった。だが指揮官はこう腹をくくった。
「そうなったらその時に考えようと。負けている状況やし、まずは追いつく。さらに一気に(逆転まで)行ける状況は作っておきたかった」
この代走により、DeNAは警戒すべきポイントが増えた。絶対に逆転のランナー・江越を二塁には進めたくない状況。二盗、さらに三走・植田との重盗阻止。長打が出れば、勝ち越しを許す危険性も高まる。
DeNAのバッテリーは打者だけに集中すればいい状況ではなくなった。落差の大きいツーシームは、スタートを切られやすいだけでなくバッテリーミスも起こりやすくなる。
運命の2球目を投じる前、ハマの守護神・山崎が近本をじらすかのように8秒という長い間合いを取った。それに動じることなく、虎のルーキーはファウルとなった初球の振り遅れを修正し、同じ148キロ直球を左翼ポール際へ運んだ。
直球が続いたことに矢野監督は「それに関しては分からん」と笑いながら振り返った。だが劇的な一発の裏に“代走・江越”というベンチの妙手があったことは間違いない。(デイリースポーツ・和田剛)