【芸能】NGT騒動にみるネットの“暴走” 行き過ぎた犯人捜し

 懸念していたことが、実際に次々と起こっている。メンバーの山口真帆(23)が昨年12月、新潟市内の自宅で男性から暴行される被害を受け、今月18日の公演をもって卒業するという、異例の事態に追い込まれているNGT48。とりわけ、再出発を期するメンバーに対しての“風評被害”が、とどまるところを知らない。

 7日には、メンバーの清司麗菜(せいじ・れいな、18)が、公式モバイルサイトの「フォトログ」で山口に対して触れた記事が削除された。これがさまざまな憶測を呼び、清司のSNSはあっという間に炎上。3月に行われたAKSの会見では直接指摘し、先日つづったコラムでも改めて触れた、NGTメンバーに対する「犯人探し」の動きは、日に日に苛烈さを増している。

 今回、清司が触れた内容の是非は、少なくとも部外者には分からない。当該の投稿を削除したのはだれか、これも部外者には分からない。だが、いわゆる「ネット民」は、清司とAKSを“総攻撃”した。その結果として何が起こるか、もしかしたら、いわれのない中傷で誰かが傷つくかも…、という配慮は、恐らくなされないままに。

 AKBグループが、インターネットというツールを最大限に活用して大きくなったことは、疑いようがない。不特定多数の、ある意味「愉快犯」への対策も、それなりに取ってはきただろう。だが、昨今の「炎上」の流れは、もはや簡単にコントロールできるものではない。言葉を選ばずに言えば、無責任な匿名の外野が方々から発火する行為に対して太刀打ちするのは、現実的に不可能だ。

 もちろん、インターネットは他人とのつながりに意味を見いだすツールであるし、自由に意見を言う権利は誰にでもある。だが、その権利を濫用し、誰がどのように傷ついても知らんぷり…、というのは、さすがに問題だろう。NGTでは荻野由佳(20)も、起用されたアパレルブランド「Heather」のプロモーションが中止された。再三の指摘になるが、清司にせよ荻野にせよ、山口の騒動に直接関与したと判断できる明確な材料は存在しない。その中で、こうした「私刑」が自然に行われているということは、およそ成熟した社会ではあってはならないことではないか。

 NGTの件に限らず、ネットユーザーの“暴走”は、恐ろしいものがある。仮にその主張が正鵠を射ていたとしても、綿密な検証の上で具体的な根拠をもった上で行われなければ、どこまで行っても「私刑」に過ぎない。そういった事態を防ぐために、我々メディアはより深く取材を行い、事実の検証が完了した時点で報道する。それに物足りなさ、もっと言えば不信感を覚える方々が多いのは、身にしみている。だからといって、逆に一部の声におもねるために、事実を曲げて報道するということは、我々には許されない。

 先日のコラムにも書いたが、実際のところ、この案件に対する取材は、恥ずかしながら十全ではない。それがまた、多くの憶測を生む“一助”になっているとしたら、忸怩たる思いだ。だが、改めてネットユーザーの方々に問いかけたいのは、「自分の行動の影響力を、十分に理解していますか?」ということ。仮に今回の件に関し、「山口真帆さんがいじめられた」という“正義感”に駆られて行動したとして、いじめたと思う人間を、名前も場所も、何もかも秘匿して攻撃することは、よりたちの悪い「いじめ」に陥る可能性があることを、冷静になって理解するべきだと思う。

 5月18日、山口ら3人のメンバーはグループからの卒業を迎える。それは、決して望んでいたものではないということは、山口の主張からも明らかだろう。アイドルグループとして成立していくために、今回の件に関して目をそらしたまま次の流れに進むことは、もちろん賛成できない。だがそのために、無差別に誰かを攻撃しても良いということではない。ファンにとっても、メンバーにとっても最良の解決方法は何か。あと1週間で、運営側は結論を出さねばならない。(デイリースポーツ・福島大輔)

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