【競馬】松岡が英語に堪能な理由
元号が令和へと変わった5月1日。栗東トレセンではNHKマイルCの追い切りが続々と行われ、坂路へと向かったマイネルフラップの鞍上には、美浦から駆けつけた松岡正海騎手(34)=美浦・フリー=の姿があった。
その3日前には、ウインブライトで香港G1・クイーンエリザベス2世Cを制覇。ど派手なガッツポーズ、鮮やかなレコードV…ネタの鮮度は抜群だ。美浦所属の彼になかなか取材できる機会もないので、どしゃ降りの雨のなか、一目散に梅田厩舎へと向かった。
梅田智之調教師のご厚意もあり、厩舎大仲で取材を開始。マイネルフラップの感触を聞いた後、あの香港の歓喜を振り返ってもらった。
-優勝おめでとうございます。
「ありがとうございます。ずっと馬に教えてきたことをここ一番で出すことができました。それが何よりうれしかったです」
-ゴール前はど派手なガッツポーズ。
「気持ち良かったですね。事前に(ウインの)社長に言われていたんですよ。“勝ったら派手めなガッツポーズで”って(笑)」
-ちょっと早過ぎませんでした?
「そうですか?ゴール前はもう突き抜けていましたからね。あれぐらいなら、日本でもセーフでしょう」
-そして勝利インタビューでのやりとり。英語がお上手ですね。
「それ、日本に帰ってからみんなに言われる(苦笑)。英語は小学校の時に少しだけ英会話スクールに通っていたぐらい。まあ、若い頃にアイルランドとかに行ってましたからね。そんなに特別ではないですよ」
聞けば、最大の勝因は当週の火曜日にあったという。なぜか?詳しく聞いてみた。
-早めに香港入りしたそうですね?
「これまでは追い切りしか乗ったことがなかったんですが、今回は追い切り前日の火曜に普通キャンターと角馬場を乗ったんです。腰の状態と、気合の乗り具合をチェックする目的で」
-翌日の追い切りの感触は?
「輸送もあったし、(強く)やるつもりはなかったのですが、前日に乗った感触で“やらないと勝てない”と感じました。これだけのレース。日本の2頭も強いですからね。極限までやらないと勝てないと思いました」
-その効果がてきめんだった?
「レース当日はパドックから気合が入っていました。期待通り。状態も良かったし、火曜に乗って本当に良かったです」
レースは中団のインを追走。直線で進路が開くと、前を行く1番人気エグザルタントを退け、栄光のゴールへ飛び込んだ。父ステイゴールドが有終Vを飾った香港の地で、驚異のレコードを樹立。
-振り返って。
「ゲートボーイを気にして出遅れ。その後も競馬がタイトで、道中はぎっしりしていましたが、これだけのメンバーですから少しのロスが命取りになる。なので、折り合いをつけてロスのない競馬を心掛けました。馬の方もペースが上がるなりに、ニュートラルに僕の追いだしを待ってくれて。しっかりと折り合い、少ないロスで運ぶことができました。もともと“3~4角で僕の指示を待てる馬”にしたいと思っていたんです。思い通りのレースができましたね」
-仕掛けのタイミングもバッチリ。
「12、13年前に海外で騎乗して、ヨーロッパのジョッキーが“どこでどう動かすか”を知っているから、仕掛け遅れることなく追い出せました。海外で色々と経験したことがアドバンテージになったと思うし、そういう利点を生かせましたね。僕自身、この勝利が海外での初勝利。気持ち良かったです」
振り返れば、昨年夏の札幌開催。俗に言う“裏函”で調教をつけていた松岡に「秋の期待馬は?」と質問したとき、即答したのがウインブライトだった。
「そうでしたね。あの頃は腰の状態が良くなくて…。でも、あそこで無理に使わなくて正解でした。秋のマイルCS(9着)で復調の兆しを見せて、年末ぐらいから馬がグンと良くなったんです。だから、年明けの中山金杯は今まで乗ったなかで一番、自信がありました。あの頃から言ってたんですよ。追い切りの感触がすごく良かったから“俺にG1を勝たせてくれるんじゃないか”とか“俺が乗るレベルの馬じゃないよ”ってね。もともと若い頃から素質の片りんは見せていたけど、やはりステイゴールド産駒は晩成なのかな?これからが本当に楽しみですよ」。
さらなる飛躍が期待される松岡&ウインブライト。陣営の協議の結果、今夏は北海道のコスモヴューファームで英気を養い、順調ならば秋はオールカマー(9月22日・中山)から始動し、天皇賞・秋(10月27日・東京)と香港カップ・香港G1(12月8日・シャティン)の3戦を予定しているという。『ホーム』とも言える中山で弾みをつけ、国内外のG1制覇へ-。平成最後のG1馬が、令和でも輝かしい活躍を見せてくれることだろう。(デイリースポーツ・松浦孝司)