【野球】ソフトバンク椎野 先発デビューはホロ苦もブルペンの救世主となるか
苦い先発デビューだった。
ソフトバンクは14日の西武戦(北九州)を「ブルペンデー」で戦った。先発の谷間を埋めるべく抜てきされたのは大卒2年目の大型右腕、椎野新投手だった。
1軍でまだ通算3度目のマウンドにして大役だ。「強気で攻めます」。しかし、コテンパンにやられた。初回こそ無失点に乗りきったが、二回に外崎に場外3ランを浴びると、三回は先頭の秋山、続く山川に二者連続弾を献上。3発目の打球を茫然と見送り5失点したところで交代が告げられた。その後乱打戦となったが、ソフトバンクは7-11で敗戦。椎野はプロ初黒星を喫したのだった。
「まだまだ自分の実力が足りないと感じました…」
ベンチでもしばらく表情を失っていた椎野だが、下を向くことはない。成長度は目を見張るものがある。ともすれば、現在お疲れ気味で崩壊寸前のブルペン陣の救世主になるのではなかろうか。
なにより体のサイズが魅力だ。身長195センチ(NPB発表では196だが自己申告)はチーム日本人投手で最長身だ。投げ下ろす威力ある直球が武器なのは想像に難くないところだ。しかし、国士舘大からプロ入団した当初は「140キロ台前半しか出なかった」。むしろ制球力で勝負をするという珍しいタイプだった。
だが、ソフトバンクの育成システムの中で体づくりを敢行。「体重は8キロ増えました」。今年春先のファーム戦。直球の勢いは明らかに違っていた。最速152キロをマーク。さらにフォークも操り、2軍では防御率1.00という好成績を残してきた。
「工藤監督にストレッチの重要性を話してもらい、1カ月ほど前から寮の部屋などで時間を見つけて行うようになりました。もともと体が硬い方ですが、股関節の可動域が変わった。投げてみると体重移動がスムーズになって、球が変わったんです」
さらに2週間前からは通販で青汁を取り寄せて飲むようになった。「明らかに体調が良くなりました」。周りのチームメイトは「たった2週間で変わるわけないだろ」と笑い飛ばすが、気の持ちようも大事だ。
先発翌日からさっそくブルペン待機。今後はリリーフでチャンスを待つことになる。首位に立つソフトバンクだが、5月半ばにして救援陣には疲れが見え始めている。今のプロ野球はブルペン力がチームの順位に直結するといっても大袈裟ではないほど重要なポジションだ。
椎野がこのまま成長曲線を描けるか否か。今後のソフトバンク堅首の行方に関わってくるはずだ。(デイリースポーツ特約記者・田尻耕太郎)