【競馬】歴史的瞬間を見逃すな!マスターフェンサーが米三冠最終戦に挑戦
現地時間5月4日に行われた米三冠レースの第1弾ケンタッキーダービー。1位入線したマキシマムセキュリティが4コーナーで他馬の走行を妨害し、17着に降着。14番人気のカントリーハウスが繰り上がって優勝し、大波乱の結果となった。
日本から参戦したマスターフェンサー(牡3歳、栗東・角田晃一厩舎)は6着。日本調教馬の出走は1995年のスキーキャプテン(14着)、2016年のラニ(9着)に続く3頭目。日本のレースを対象にした出走馬選定ポイントシリーズ「JAPAN ROAD TO KENTUCKYDERBY」で出走権を獲得した馬としては初の挑戦。また、スキーキャプテンとラニが米国産のマル外馬だったことから、日本産馬として初めての参戦となった。
「タイトな日程だったからね。よく頑張ったよ」。角田師が納得の表情で話す。4月23日に日本を出発し、アーリントンパーク競馬場の検疫を終えたあと、調整するキーンランド競馬場に到着。さらに、同29日にはケンタッキーダービーが行われるチャーチルダウンズ競馬場へ移動と、目まぐるしい環境の変化にも対応した。「最初は輸送でナーバスになっていた。そこからの回復に感心する。走れる状態にまで戻ったんだから」。3歳馬とは思えない精神力に驚きを隠せなかった。
まるで田んぼのようだった。前有利の泥んこ馬場のなか、出遅れたマスターフェンサーは最後方を追走。直線はインから末脚を伸ばして前を猛追した。誰もが健闘と思える6着だ。「欲を言えば、最初から内を突いていればさらに上位があったかな」と角田師が残念がる。勝負どころで外を選択しようとするシーンがあり、終始内を通っていれば…と思うのもうなずける。日本とは違い、賞金が出るのは5着まで。果敢な挑戦を決断したオーナーの思いに報いたかった。そんな悔しさが、師の言葉から伝わる。
それでも、次に向けて希望の持てる内容だった。「道悪の2000メートルではついていけなかった。マイル(ヒヤシンスS)の時はもっとひどかったからね。レース後、ジョッキーがすぐに“ベルモントS”って。距離を短くする必要もないし、距離が持つのは分かっているから」。2冠目のプリークネスS(5月18日・ピムリコ、ダート1900メートル)をスキップして、最終戦のベルモントS(6月8日・ベルモントパーク、ダート2400メートル)を選択。レース間隔や条件を思えば、当然と言える判断だ。
地元アメリカ勢にとっては、ケンタッキーダービーこそ最大の目標。米三冠を構成するプリークネスS、ベルモントSが総賞金150万ドルであるのに対し、ケンタッキーダービーのそれは倍の300万ドルだ。また、皐月賞、ダービー、菊花賞と十分な間隔で行われる日本の三冠レースとは違い、米三冠レースは中1週、中2週の間隔で開催され、最高の状態で全てに出走することなど困難。かなりタフな戦いを強いられるため、レースごとに頭数が減ることもしばしばだ。
勝つチャンスはある。「上がりはいつも最速。今回も最速だったからね」と角田師。確かに国内のダート4戦で記録した上がり3Fは全てメンバー最速(ヒヤシンスSは最速タイ)。海外でもその決め手が通用することは前走が証明している。「キックバック、ゲートボーイ、誘導のポニー、馬込みを割ってきたこと。いろんな経験が次に生きる」と胸を張る。
愛馬の成長ぶりも頼もしい。「日本にいた時はあんなにずぶとくなかった。短期間で随分と大人になったと思う。前日に行われたケンタッキーオークスの時は、すごく周りがうるさかったのに、馬房で寝てたぐらいだから」と笑う。初物ずくめだった前走から、相当な上積みが見込めるのだから、楽しみしかない。「前走後もいい状態。さらに調子を上げていきたい」と意気込む。
現地時間18日に行われたプリークネスSを制したのはウォーオブウィル。ケンタッキーダービーではマスターフェンサーに次ぐ7着だった馬だ。また、ケンタッキーダービーで1位入線しながら17着降着となったマキシマムセキュリティは、ベルモントSには参戦しない意向を示している。そして、2位入線から繰り上がりのケンタッキーダービー馬となったカントリーハウスは、感冒でプリークネスSを回避。たとえベルモントSに参戦してきても、順調さを欠いた不安は否めない。
米三冠最終戦は大混戦。「勝ち馬が絶対に1頭いるんだから。日本から来たからなんて言い訳にならない」と指揮官。今から胸がワクワクする。決戦は6月8日(現地時間)。歴史的瞬間を見逃してはならない。
(デイリースポーツ・井上達也)
関連ニュース
編集者のオススメ記事
オピニオンD最新ニュース
もっとみる【スポーツ】現役引退の丸山城志郎 「打倒・阿部一二三」に燃えた現役時代とは 私生活もすべて柔道に捧げる
【野球】「魂はそこにはない」元プロ野球審判の住職が明かす現代のお寺事情 墓じまいの相談、葬儀のあり方…
【野球】ユニホームを脱いで初めて迎える3・11 東日本大震災以降、福島・いわき市と交流を続ける楽天前監督・今江敏晃さんの決意と思い
【野球】広島・ドラ3岡本の無失点投球を支える“封印しかけた魔球”とは? 「自分でもビックリ」 新井監督絶賛「見極めづらい」
【野球】なぜ?広島・藤井ヘッドの一人娘・綾乃さんが大阪を離れ慶大の野球部マネジャーを選んだ理由 上京決めた“運命の出会い”とは
【野球】江藤智の同点満塁弾、二岡智宏のサヨナラ弾で決めた劇的過ぎる巨人のミレニアムV「29年間で1番の歓声」元NPB審判の住職が回想
【野球】野村克也監督の唐突な問いかけ「審判に一番大事なものは何だ?」 住職に転身した元プロ野球審判がたどり着いた境地
【野球】まさかのリプレー検証での誤審 元NPB審判の住職が振り返るオリックス監督激怒騒動 リクエスト弾はファウルだった…