【スポーツ】アマボクシングで体重管理を可視化へ 選手の相談窓口設置も
ボクシングの男子世界選手権(9月、ロシア)の日本代表選考会が6月14日から16日まで都内で行われ、フェザー級の代表に村田昴(22=自衛隊)、ライトヘビー級の代表に梅村錬(22=拓大)が選ばれた。ほかの4階級は前年度の全日本選手権優勝者がすでに代表に決まっている。
今回のフェザー級は従来のAIBA階級と体重区分の変更が大きいため、バンタム級(56キロ級)とライト級(60キロ級)の上位選手4人で選考会を実施。総当たり戦を予定していた。しかし、堤駿斗(19)=東洋大、森坂嵐(22)=東農大OB=の2選手が体調不良で2日目以降を欠場する事態となった。
東京五輪に向けて最も注目を浴びているのが、5月の国際大会(ロシア)で金メダルとMVPを獲得した堤だった。習志野高時代には6冠、世界ユース選手権で日本人として初優勝。井上尚弥(相模原青陵高)以来となる高校生での全日本選手権制覇など、輝かしい成績を残している。
しかし、今回は脱水症状、腹痛、嘔吐など減量の影響と見られる症状で欠場を余儀なくされた。最終日には体調不良を押して選考発表の場に同席し、「本当に申し訳ない。これからできることがあるので努力していきたい」などとコメントした。繊細な体重管理が求められるボクサーにとって、減量失敗は精神的にも大きなダメージがある。19歳の憔悴(しょうすい)した表情からそれが見てとれた。それでも公の場に立って自分の気持ちを口にしたのは、必ず日の丸を背負って立つという19歳の決意の表れにも見えた。
一方で、これを機に日本ボクシング連盟は選手の体調管理を組織的に行う方針も固めた。内田貞信会長、菊池浩吉副会長は、堤とこの日1時間ほど会談し、減量方法などを聞き取った。内田会長は「選手が最高のパフォーマンスをできるようにサポートする相談窓口を早急に開きたい」と明かし、さらに「(連盟内には)スポーツ科学委員会、医事委員会となど専門部会もある。(日本代表候補クラスには)週2回は体重を報告してもらい(平常時はリミットより)8~10%(増)をキープしてもらうようにする」と説明した。
プロの場合は選手にもよるが、年間2、3試合に向けて1、2カ月ほどかけて減量し、前日計量が終わればある程度体重を戻すことができる。しかし、アマはトーナメントで勝ち続ければ10日から2週間ほど体重を維持しなければならないこともある。その間、万全の体調で戦う体を、減量を伴いながらつくる難しさがある。
今回の堤は通常のバンタム級より1キロ増という余裕を持った中での調整失敗だったが、これはボクサーの減量がそれほど単純ではないことの証しだ。菊池副会長は「減量は歴代の中で正しいと覆っていることが引き継がれる傾向があり、それが科学的な根拠を持っていないこともある。今後専門的なドクターを交えて検討していきたい」と言う。
五輪での競技開催が決まったばかりのボクシングは国際ボクシング協会(AIBA)から五輪での運営が特別作業部会へと移るため、まだすべてが流動的だ。AIBA主催の世界選手権は五輪予選を兼ねず、五輪での実施階級も未定。そんな不透明な中でいかに選手の体を守るのか。日本連盟には大きな責務が課されている。(デイリースポーツ・船曳陽子)