【野球】頭部死球後、初球二盗を決めたガッツ オリックス福田周平の反骨心
衝撃だった。
オリックス・福田周平内野手は7月6日・ソフトバンク戦(ほっともっとフィールド神戸)の八回にモイネロの150キロがヘルメットを直撃する頭部死球を受けた。倒れはしなかったが、審判にうながされベンチに戻る。もちろん、モイネロは危険球退場。再びグラウンドに戻ってこられるのか?そんなシーンだった。こちらの心配をよそに背番号4は颯爽とベンチから飛び出し拍手に迎えられて一塁へ向かった。
次の瞬間だ。代わった加治屋の初球に福田が二塁へ向けてスタートを切るではないか、しかもヘッドスライディングまで見せた。闘志あふれるプレーにスタンドは沸いた。
後日、本人に聞いてみた。
「絶対走ったろうと思ってました。(治療で戻った)ベンチ裏で“投手だれに代わったんですか?”って聞きましたから。加治屋って聞いてチャンスと思いました」
痛みを心配するこちらに対して「ちょっとは痛いですけど、脳しんとうはなかったし全然イケると思ってました。ああいうときってアドレナリンが出てるんで、意外と痛みも感じないですから。それにあそこで出て行ったらカッコいいでしょう」とさわやかなスマイルを見せた。
負けん気の強さこそこの男の原動力だ。167センチと野球選手としては小柄。
「子供の頃からプロ野球選手になりたいとずっと思っていました。だから、こんな体でもプロでできるんだっていうところをスタンドで見ている人に見せたいと思っています。体が大きい人にも負けないというところをね」
広陵-明大-NTT東日本と野球の名門を渡ってきた。だが、野球エリートと言われることを嫌う。
「高校でも大学でもドラフトに引っかからなくて社会人でも2年で掛からなかった。普通、野手で社会人2年目で掛からなかったらプロはないですよ。だから僕はエリートじゃない。雑草です」
あこがれの場所は遠かった。何度も何度も挫折を味わった。25歳でドラフト指名。ようやくたどり着けた。
「ドラフトのたびに落ち込みました。だからこそ、負けたくない気持ちは誰よりも強いと思います。絶対誰にも負けない。アマチュアでこれまで一緒にプレーしてきた人たちのためにも負けないプレーを見せたい」
チームは前半戦を最下位で終えた。反骨心の男がこのままで終わらせるわけがない。後半戦、「1番・福田」がオリックスの反抗をけん引するはずだ。(デイリースポーツ・達野淳司)