【スポーツ】守備の安定だけではない J1神戸DF酒井高徳の加入効果
ドイツ2部ハンブルガーSVからJ1神戸に完全移籍で加入した元日本代表DF酒井高徳(28)が、17日のホーム浦和戦(ノエスタ)で久々の日本復帰を果たした。Jリーグのピッチに立つのは新潟に所属していた2011年12月3日以来2814日ぶりだった。
左ウイングバックとして先発し、後半33分まで78分間プレー。時折、対面の浦和MF関根貴大の仕掛けに手を焼いたものの、ベルギー代表DFトーマス・フェルマーレンが「フィジカルに優れ、一対一に強い」と賛辞を贈ったように守備の強度は期待通りで、神戸にとって6試合ぶりの勝利、8試合ぶりの無失点に貢献した。
神戸はリーグ4位の36得点を挙げながら、同ワースト2位タイの39失点を喫しており、攻守におけるアンバランスさが15位という低迷の大きな要因となっていた。それだけに酒井の起用が即座に目に見える結果となって現れ、トルステン・フィンク監督も「左サイドをより安定させてくれる」と大きな信頼を寄せた。
酒井加入の効果は守備の安定だけではなかった。浦和戦後、酒井は「喋るということがいかに重要か、意外にチーム内に浸透していない。きつい時こそ一言二言、注意力を上げるためにも声を掛けるというのは非常に大事になってくるので、そこは自分の中で意識した」と、コミュニケーションの重要性を説いた。その言葉に同調したのがMF山口蛍だった。「向こう(ハンブルガーSV)でキャプテンをやっていたくらいなので、すごく声の出せる選手。外国人選手がたくさんいる中で、引っ張っていける選手がいるのはすごく大きい」。
1-4で敗れ、リーグ戦7連敗となった5月18日のアウェー横浜M戦(日産ス)の後、欠場のMFアンドレス・イニエスタに代わってキャプテンマークを巻いた山口は「なかなか声を出しても、みんなもう少し応えてくれてもいいんじゃないかというくらい落ち込んでいる。みんながもっと前向きになっていかないと厳しい」と呟いていた。苦境にあえぐチームを鼓舞しても反応は薄い。そんな状況にもどかしさを抱いていた山口の目に、声を出し続け、周囲とのコミュニケーションを欠くことのない酒井の姿は頼もしく映ったに違いない。
酒井の加入は神戸に想定以上の効果をもたらすかもしれない。フィンク監督は「彼を獲得したのはサッカーの能力もあるが、三浦(淳寛)SDが彼の性格を知っていたこともある。本当に速いスピードで溶け込んで、既にチームの一員になっている」と、酒井の気質も高く評価した。
神戸は23日にアウェー鳥栖戦(駅スタ)を迎える。ピッチ内外で存在感を増している酒井は左ウイングバックで2試合連続の先発出場が確実となっている。神戸が無失点で試合を終えればリーグ戦では今季4度目。2試合連続は初めてとなる。(デイリースポーツ・山本直弘)