【野球】日本ハム・吉田輝が先輩“金子道場”に学ぶチェンジアップの極意
日本ハム・吉田輝星投手(18)は、金子弌大投手(35)の“変化球バイブル”から成長のヒントを得ている。
少しずつ秋の気配が漂い始める千葉・鎌ケ谷の2軍施設。今季中の再昇格を目指す黄金新人は、キャッチボールで新球チェンジアップの習得を始め、ブルペンではスライダーを繰り返し投じていた。
「金子さんに(変化球の)イメージを聞いています。チェンジアップはゼロからのスタートで、金子さんに教えていただきました」
6月12日・広島戦(札幌ドーム)でプロ初登板初先発し、5回4安打1失点で初勝利。だが、それ以降の2試合は洗礼を浴びた。持ち味の直球をもう一段階レベルアップさせることが最重要課題。一方、その武器を生かす変化球の精度向上も重要なポイントとなる。
初めて“金子道場”の門をたたいたのは初勝利を飾った時。プロ通算125勝右腕の伝家の宝刀、チェンジアップの極意を聞いた。
真剣な表情で耳を傾けるルーキーに対し、金子は惜しみなく自身の技術を伝授した。さらに、チェンジアップを含め変化球全般に対する考え方も伝えた。
「変化球は変化させるのではなく変化するもの。難しく考えてしまうと本当に難しくなってしまうし、直球を投げられなくなる」
吉田輝のスライダーに対するイメージは「大きく曲がる方が良い」。しかし、それはあくまでも投手目線の自己満足にすぎず、打者目線ではない。“精密機械”と呼ばれる先輩は自らの経験を元に、持論を展開していく。
「高校時代を思い出すと、自分が打者だったら手元で小さく曲がる変化球の方が嫌だったんです。そういう打者は多いと思います。また、いつでも同じような変化ではない方がいいと思うんです。僕は打者によって変えていますけど、スライダーだったら曲がったり曲がらなかったり。デタラメがいいんです」
まだ、終わらない。
「『キャッチャーの意見を聞き過ぎない方がいい』という話もしました。バッターから見える角度と違いますし、バッターがどう感じるかなので。それと、僕のチェンジアップはブルペンで投げるとただのスローボールなんです。(試合で投げる前に)『やめてしまったらもったいない』という話もしました」
金子は「160キロを投げられるピッチャーではないですし、人とは違う視点で野球をやってきました」とプロ野球人生を振り返る。吉田輝がプロ2敗目を喫した8月14日・ロッテ戦(東京ドーム)の時も、チェンジアップが「うまくいきません…」と相談してきた後輩に親身になって寄り添い、助言を送った。
自慢の直球で“金足農旋風”を巻き起こし、甲子園準優勝を果たした昨夏から1年。憧れのプロ野球選手となった18歳の青年は厳しい世界を体感し、進化の必要性を実感する。
「ストレートを生かすためには前後幅を使うことだと思いますし、打者からすればチェンジアップは嫌だと思います。まだブルペンでは投げていないので、試作品です(笑)」
最速152キロの直球に打者の手元で鋭く曲がるスライダー。自信のあるツーシームを効果的に散らし、勝負球は金子直伝のチェンジアップ。「理想」と話す投球ができれば視界は一気に開けそうだ。
次回登板は31日のイースタン・ヤクルト戦(戸田)。晩夏の快投は必ず秋につながる。大先輩への感謝を結果で表現し、1軍再昇格のチャンスをつかむ。
(デイリースポーツ・中野雄太)