【野球】なぜオリックス吉田正はスランプがないのか 打撃3部門自己新の勢い
オリックスの吉田正尚外野手(26)は現在、打率・331、26本塁打、81打点と打撃3部門で自己最高記録を更新する勢い。4年目にして球界を代表するスラッガーへと成長した。特筆すべきは全試合に出場しながら連続試合無安打は3試合が最長とスランプ知らずの安定感。173センチのどこにその秘密が隠されているのか探った。
最下位チームにあって吉田正は打ち続けている。9月の月間打率も・378。優勝の可能性が消え、モチベーションを保つのが難しい時期に来てもその打棒は変わらない。
これこそが吉田正のスゴみだ。今季も3試合連続無安打が最長。5月26-29日(27日は試合なし)と7月6-8日の2度だけ。5月の場合は無安打といっても4四球、1犠飛があり打数にすれば7でしかない。7月も2四球が絡んでいるため11打数。ホームラン打者にありがちなスランプとは無縁だ。
イニング別の安打、本塁打、打点は一~三回、四~六回、七~九回とわけても満遍なく打っている。
なぜここまで安定した成績を残せるのか。かつての大打者のような猛練習の逸話は聞かない。早出特打もまず見ない。本人に聞けば「努力は見えるところでするものじゃないですから」と笑ってごまかされた。
代わって田口野手総合兼打撃コーチはこんな話をする。
「腰の持病があるからめちゃくちゃ打ち込むことはない。アイツはずっと考えている。そこがスゴイ。たぶん24時間、打撃のこと考えてるんちゃうか」
“考える”がキーワードのようだ。あらためて本人に聞いた。
「子供のころから打撃を教えてもらったことはないですね。自分で考えて作り上げてきたから修正が早いのかもしれません」
子供のころ野球に出合い、打撃に魅せられた正尚少年。もっと打ちたい、もっと飛ばしたい思いから打撃にのめり込んでいった。そして、プロ野球選手になった今もその探究心は変わっていない。
「ほかに趣味もないんでヒマがあったら打撃の動画を見てますね。メジャーだけじゃなく、日本の昔の選手のも見ますよ」
参考にするわけではない。どういうメカニクスで打っているかを理解するのだという。究極の打撃オタクだ。
まだある。フルスイングが代名詞だが「ホームラン打者ではない。ホームランだけ狙っていたら率は下がる。三振は嫌いですし、率も本塁打も打点も出塁率も全部のタイトルを取れるなら取りたいと思っている」と話す。本塁打か三振かのような荒っぽい打者像は頭にない。
完ぺきを追究する姿は打撃道を追究しているかのようにも見える。練習法も考え方も球史に例を見ないスラッガーなのかもしれない。(デイリースポーツ・達野淳司)