【野球】「こんなにきついとは」トミー・ジョン手術を経て復活へ 広島高橋昂が歩む道
グラウンドに倒れ込み、何度も大きく息を吐いた。額には大粒の汗がいくつも浮き上がっている。ダッシュなどのメニューは毎日の日課。今年2月に左肘のトミー・ジョン手術を受けた広島の高橋昂也は「こんなにきついとは思わなかった。レベルアップしているかどうか見えてこない」と苦笑いを浮かべた。
キャッチボールなどボールを握る時間は一日のうちでほんのわずかしかない。大半は筋力トレーニングやランニング、ダッシュなど体の強化メニューを行う。「1カ月以上、ほぼ毎日同じことをやっているので…」。大野寮を出て近くの山道などを走る3キロの長距離走がわずかに気分転換になっている。
「(17年に同じ手術を受けた)床田さんに、このきつさはやった人しかわからないと言われたんです。それは本当でした」。変化の少ない日々は若鯉にとって初めての経験。心が折れそうになっても不思議ではない。それでも必死につなぎ止め、床田も歩んだ復帰プログラムを黙々とこなしている。
硬球を使ったキャッチボールは7月上旬から再開した。1セット15~20球を2回、多い日で1日40球を投げる。当初は球の重さに戸惑ったが、徐々に指先の感覚が戻ってきた。距離は1週間ごとに5メートル伸ばし、40メートルを超えた。小川トレーナーは「順調に来ていると思います」と話す。
現在はゆっくりと腕を振り、山なりの球を投げている。次は強度を上げてライナー性の球にしていくプランだ。10月をメドに段階を上げていく。
術後、左肘から腕にかけてギプスで固めていた影響で、箸を右手で使うようになった。今では左手と遜色なく使えるという。「ユーチューブを見て勉強したんです。持ち方は右の方がきれいだと言ってもらえます」と表情を崩した。
春季キャンプ中の2月にメスを入れた。約1年後の復帰登板を目指しており、折り返し点は通過した。半年後にパワーアップした姿でマウンドに上がるため、苦しさを乗り越えていく。(デイリースポーツ・市尻達拡)