【野球】楽天3位導いた平石監督なぜ1年で退任?背景に石井GMが進める“変革”
楽天は平石洋介監督(39)の1年契約満了による退任を決定し、11日に三木肇2軍監督(42)の来季新監督就任が発表された。なぜチームを3位に導いた指揮官がわずか1年で交代となったのか。その背景に、常勝チームを作るために石井一久GM(46)が推し進める“変革”の一端が見えた。
驚いた人も多かったのではないだろうか。平石監督が、就任わずか1年で契約満了による退任。チームは昨季最下位から3位へ躍進しただけに、この監督交代劇に批判の声が上がるのも無理はない。
石井GMは平石監督退任理由の説明の中で「指導者は得意分野がある。細かい野球をする戦略家、ダイナミックな野球で長所を伸ばす指導者、雰囲気を作るモチベーション指導者など」と説明した。それで言えば、平石監督はモチベーションを上げる指導者だろう。
球団創設初年度からチームに在籍し、育成コーチ、2軍の指導者からのたたき上げ。選手からの人望も厚い。6月下旬から10連敗を喫しながらチームが崩壊することなく、終盤のCS争いにとどまったのは、平石監督の力によるところが大きいと感じる。
ただ、目標を優勝とするならば限界点が見えていたのも事実だ。「バントやスクイズなどの精度、サインミスの多さや走塁を含めた意識改革が改善しきれなかった。長くある課題だと認識している」と石井GMは話す。
例えば盗塁。チーム盗塁数はリーグ最少タイの48盗塁。昨季のリーグ最少だった69盗塁も下回った。盗塁死は38。機動力は機能していなかったと言える。
浅村、ブラッシュが加入し、打線には軸ができた。だが、特にシーズン中盤以降はここぞでの1点が奪えず勝利を逃していた。
「点の取り方のバリエーションを増やしていかないと。補強の前に組織として1点を取る野球ができないと、どんな選手が来ても上にはいけない」。石井GMはそう話す。そのために選択したのが三木新監督だった。
今季は2軍監督を務めたが、昨季のチーム盗塁数60個から、今季は99個まで伸ばした。象徴的なのが2年目・山崎だ。今季は2軍で22盗塁を記録。7月に1軍へ昇格すると右肩を痛めて降格するまでの約1カ月、僅差の九回に代走で盗塁を決めるなど、攻撃にアクセントをもたらした。
「中長期的に優勝を狙えるチーム作り」という目標へ、現状の課題解消への人材を用いる。三木新監督も平石監督同様、現役時代の実績は乏しく、2軍コーチから実績を積み重ねた。あくまで指導者としてチームにフィットするか。そのシンプルな発想に基づいたメジャー式の登用だ。
チームの伝統を築くのは一朝一夕にはいかない。だが楽天のぶれない変革は、驚きと共に新しい未来を見せてくれるのではないか-そんな期待感を持たせてくれる。(デイリースポーツ・中田康博)