【野球】12球団ワースト102失策 阪神15年ぶりの頂点へ避けて通れない課題
プロの世界は結果の世界だ。活躍した者が称賛され、失敗した者は非難される。分かりやすいのは、テレビの野球中継か。選手が打てなかった時は打撃コーチが、守備でミスした時には守備コーチが頻繁にアップされる。阪神の久慈、藤本内野守備走塁コーチにとっては、苦い記憶として残る1年にもなった。
今季、守備面では12球団ワーストの102失策。最下位となった2000年以来、19年ぶりの屈辱でもあった。今季から1軍に上がった藤本内野守備走塁コーチは言う。「何を言っても、こうやって数字が出て、それで判断されるのがプロの世界。これが今年1年の答えですからね」。担当コーチとして、悔しい胸中を隠さない。改めて102失策の内訳を振り返ると…。
【一塁】
中谷 2
原口 1
マルテ 7
【二塁】
糸原 4
上本 1
ソラーテ 2
【三塁】
糸原 1
大山 20
北條 1
【遊撃】
糸原 2
木浪 15
ソラーテ 2
鳥谷 1
北條 11
【外野手】
糸井 2
高山 1
近本 4
福留 2
中谷 1
陽川 1
【捕手】
梅野 5
坂本 1
【投手】
青柳 3
岩田 1
ガルシア 1
ジョンソン 1
島本 1
高橋遥 1
谷川 1
ドリス 4
浜地 1
守屋 1
大山の失策数20は両リーグワースト。続いて木浪が同2位に続く。ともに24歳。阪神の内野は全体的に若い選手が占める。藤本コーチは「みんな当たり前のことを、当たり前にやる難しさを感じただろう」と言う。失敗が経験になり、糧にする時期ではある。だが、同コーチは「若い子を使っています…というのは今年まで。来年はそんな甘いことは言えない」と続ける。
「選手が一番よく分かっているはず。シーズン後半はミスも少なくなってきた。CSはすごくいい経験になったと思う。この経験が自信になる。これをシーズンでも当たり前にできるように。ようやくスタートラインに立ったところですね」
だからこそ秋季練習、秋季キャンプでは基本に立ち返る。求めるのはシーズンを振り返るための「考える時間」、徹底した「反復練習」。「どういう目的意識でやっていくか。シーズンの答え合わせの時間にしてほしい」。グラウンド内外で選手に寄り添い、ともに歩みながらレベルアップを支えるつもりだ。
「打撃でも守備でもトップが大事。基本をおろそかにさせないこと。まずは軸になる基礎練習。楽をせず入りこむ。数センチの差が球際に変わってくる」
プロは結果の世界である。称賛と非難は常に隣り合わせだ。内容、過程があるにせよ、全ては数字が語る。矢野監督も18日のオーナー報告会見で「(ミスが)1個、2個減ることで、何勝も変わってくる可能性がある」と言った。硬式球の直球は約7センチ。ボール1個分…いや、半個分でも守備範囲が広がれば、ヒットゾーンは格段に狭まるだろう。
「これが現実。シーズンが終われば数字はリセットされる。でも、マイナスからのスタート。気持ちはリセットはさせない」。悔しさは胸に刻ませながら、手応えは自信として植え付けながら。反省と終盤の収穫を2020年シーズンにつなげたい。“7センチの差”で勝敗が変わる世界。10月30日からは高知県で20日間、若手を中心に秋季キャンプに入る。
気付けば2005年のリーグ優勝から、14年の歳月が過ぎた。これは1998年を最後に、優勝から遠ざかっているDeNAに次ぐ。さらに日本一となれば1985年が最初にして最後である。15年ぶりの頂点に避けて通れない課題。実りの秋にするべく、若虎は安芸で鍛錬を積む。(デイリースポーツ・田中政行)