【野球】立大の“両投げ投手”が貫いた個性 大学球界に残した確かな足跡
今年の東京六大学野球リーグからは広島1位の明大・森下暢仁投手(4年・大分商)を筆頭に、育成を含めて8人が指名を受けた。高校時代に甲子園で活躍した有望選手が多く在籍する中、実績こそ少ないが個性を放つ選手もいる。立大・赤塚瑞樹投手(4年・麗沢瑞浪)もその1人だ。
フォア・ザ・チームに徹してのリーグ戦初登板だった。14日の東大との1回戦。八回からマウンドに上がり、1回無失点1奪三振と10球で3者凡退に斬った。ただ、最大の個性は隠したまま。両投げ両打ち登録ながら、「だいぶ落ち着いて投げられた」とすべて右腕から投げ込んだ。
17年のフレッシュトーナメントでの“神宮デビュー”で、観客の注目をさらっていた。「ランナー一塁のときはけん制しやすいので左で投げたり」と説明するように、状況や相手打者に応じて左右に切り替えながら投球。“両投げ投手”として強烈な印象を残した。
正真正銘のデビュー登板を目指して努力を続けたが、壁は厚い。最終学年となった今春に溝口智成監督から提案されたのは右投げへの専念。最速144キロでスピンの利いた直球なら十分、六大学でも勝負できるという算段だった。
もちろん、葛藤があったことは隠さない。それ以上に戦力として期待されるならと、決意した。30日に全カードを終え、今春に大学日本一となった明大戦にも2度登板するなど計4試合を投げて打者15人をパーフェクト。貴重な中継ぎとして貢献できた。
公式戦では“封印”しながら、両投げを完全に断念したわけでない。投球練習での7球に個性が凝縮されている。最初の2球は右投げで直球。次はグラブを持ち替え、左投げで2球。残り3球は再び右投げに戻し、変化球で締める。「右だけで投げると変な感じ」。体のバランスを考え、ルーティンは貫いた。
小2から両投げを始めて10年以上がたち、“相棒”も小5のときに父から買ってもらった左右両投げ用のグラブを大学まで使い続けた。「新しい挑戦をしようという人は出てくる。そのきっかけになれば」。まだ見ぬパイオニアの一助となることを願った。大学卒業後は米国留学を予定。トレーナー志望で、コーチングを学ぶつもりだ。(デイリースポーツ・佐藤敬久)