【野球】「多摩川ブルース」再び!巨人7年ぶりFA補強なしの狙いとは
巨人が2012年以来、7年ぶりにFA補強を行わなかった。これまで大型補強を繰り返してきたが、今オフは主に投打の優良外国人獲得で済ませる見込みだ。狙いは若手育成と生え抜きスターの発掘にある。題して「多摩川ブルース」再び-。その背景に迫った。
今オフはFAで美馬(楽天→ロッテ)、鈴木(ロッテ→楽天)獲りに参戦した。結果的には獲得に至らなかったが、球団は来季を見据えると傷は小さく、むしろ若手選手の出場機会増につながることを歓迎している。
両者から断りを入れられた後も福田(ソフトバンク→ロッテ)や他のFA投手の獲得を目指さず、7年ぶりのFA補強なしが確定した。球団幹部は「買ったものは当然、使わないといけないから。そうすると、伸びしろのある選手の出番が減ることになってしまう」と前向きに話す。
鈴木を獲得すれば内野の枠が一つ埋まっていたが、来季の二塁は若手がし烈なレギュラー争いを繰り広げることになる。外野に関しても福田争奪戦に加わらなかったことで、丸以外の選手がしのぎを削る展開は必至だ。
若手育成へ力を入れる狙いについて、もう一つの狙いがある。今村球団社長は「出来上がった選手を獲ってきた場合、育ってきた環境が巨人ファンの方々に見えていないですよね。V9時代の人気は『多摩川ブルース』と呼ばれたスター選手が多摩川から後楽園球場へと育った成長物語があって、根強いファンが定着した。生え抜き選手は大事ですよ」と説く。
かつての王、柴田、堀内らは多摩川グラウンドでの厳しい練習を経験して、後楽園で活躍した。人気回復、固定ファン増へ、選手がジャイアンツ球場で育っていく過程をファンに知ってもらうことも大事だと考えている。
11月にジャイアンツ寮で行われた育成と1軍経験なしの若手の契約更改の席で、今村社長は「グラウンドには地位も名誉も落ちている。グレードが上がっていけば、それをつかむことができるんだ」と個々に諭した。大補強よりも、引退した阿部や菅野、坂本らのような生え抜きスターを増やすことに主眼を置き、巨人ブランドの隆盛を目指す。(デイリースポーツ・水足丈夫)