【芸能】「史上最高」のM-1を絶賛できない理由
漫才日本一決定戦「M-1グランプリ 2019」の決勝戦が22日、東京・テレビ朝日で行われ、ミルクボーイが優勝。5040組の頂点に立ち、令和の初代漫才王となった。
審査員のダウンタウン・松本人志(56)は「過去最高と言ってもいい」と大会を絶賛した。確かにネタのレベルは例年以上に高く、スタイルも多岐にわたっていたと感じるが、個人的には手放しで評価できない理由が2つある。
まず第1に、今年に限った話ではないが、「制限時間4分」というルールが、ほぼ守られなかったこと。話し始めてから終了までを計測したが、1st、ファイナルで計13本のネタが披露された中で4分以内に収まったのは、3分56秒で終わらせた「すゑひろがりず」の1本のみだった。
優勝したミルクボーイは、1本目は4分01秒と許容範囲だったが、2本目は4分28秒。ファイナルに進出したぺこぱも、1本目は4分46秒と大幅にオーバーしていた。かまいたち、和牛といった経験豊富なコンビも、1本目は4分30秒前後だった。
予選段階では、大幅に制限時間を超えるとブザーが鳴るなどの対応があったが、生中継の決勝では事実上、不可能。ネタのレベルは本当に高かっただけに、最初から“ロスタイム”を計算し、4分以内に収める気がなかったとしたら、明記されているルールに背く姿勢は、プロとして残念に思う。
2つ目は、やはり今年に限った話ではないが、放送時間が長すぎること。昨年も指摘したが、ネタは13本と決まっており、基本的には4×13の52分。1時間以内には収まるはずだ。それでも放送枠は約3時間半。残りの2時間半以上は、CMや審査員、MCのトークなどに費やされることになる。
その分、今年は例年以上に、“審査員のネタ”が目立った。松本もさることながら、自身のCDを宣伝したり、和牛を叱りつけたり…といった上沼恵美子(64)の大暴れは、どの出演者よりも目立っていたし、さすがに冗談の域を超えていたように思うし、不快感を覚えた視聴者もいたのではないか。芸人としても一流、過去に紅白司会も担当したほどの人物だけに、気になる点ではあった。
立て続けにネタを披露するよりも、間を空けながらの方が審査しやすいなどの事情は理解できる。ただやはり、レフェリーが目立つ試合に名勝負はない。再三の指摘になるが、審査員7人制での史上最高点をたたき出したミルクボーイを筆頭に、ネタのレベルは高かった。それだけに、ネタ以外の部分が目立ちすぎる番組の作りは疑問だった。(デイリースポーツ・福島大輔)