【野球】15回目のNPB12球団ジュニアトーナメント SBジュニアの画期的な取り組み
年の瀬もプロ野球12球団は「日本一」の座をかけてグラウンドで火花を散らす。12月27日~29日に札幌ドームで開催される、NPB12球団ジュニアトーナメントだ。「子どもたちにとってプロ野球の夢がより身近になるように」と創設されて、今大会でもう15回目を迎える。
ここ数年、ソフトバンクジュニアに同行取材するのが、その年の仕事納めの定例になっている。小学6年生16名の今年のチームを率いるのは帆足和幸監督だ。現役時代は変則左腕として通算90勝をマーク。引退後はソフトバンクで打撃投手や広報を歴任して、現在はスポーツ振興部に従事している。
帆足監督によれば、「今年のチームはがんがん打つわけでもなければ、コツコツつなぐのも違う。わかりやすく言えば1番から9番まで(ロッテにFA移籍した)福田選手がいるようなもの。ピッチャーも目立った存在はいない。強いて言えば先発に嘉弥真投手がいて、2、3番手も嘉弥真で4番手も嘉弥真みたいな感じ。だけどチーム一丸となって戦います」と後輩イジリをしながら意気込みを語ってくれた。
ソフトバンクジュニアが日本一に輝いたのは09年大会の一度のみ。あの年の決勝戦で戦った巨人ジュニアにはオコエ(現楽天)がいた。この大会出身のプロ野球選手もかなり多くなった。今年のパ・リーグMVPの森友哉(西武・オリックスジュニア出身)や松井裕樹(楽天・横浜DeNAジュニア出身)、近藤健介(日本ハム・ロッテジュニア出身)ら球界を代表するスターもいれば、今年のドラフトでも石川昂弥(中日1位・中日ジュニア出身)や及川雅貴(阪神3位・ロッテジュニア出身)たちがプロ入りの夢を叶えた。この2019年大会にも未来のスターが出場している可能性はかなり高いといえる。
小学校6年生という年代で、プロ野球と同じユニフォームを着て札幌ドームで野球ができる。思い出だけでなく大きな自信を得ることになるし、この大舞台で活躍すればその成功体験はこれから先の人生のプラスになるだろう。しかし、ただ勝つことだけが目的であってほしくない。
ソフトバンクジュニアでは近年素晴らしい取り組みを行っている。16年からトレーナー系の専門学校やスポーツクリニックに協力を仰ぎ、専門的知識を持ったスタッフによるウオーミングアップやケアなどのサポートを受けている。今年は「秋山クリニック」から理学療法士2名を招き指導を受けるとともに、肩や肘の検診なども行った。
取材を通じる中で、現場の指導者はもとより保護者の中でも「勝利至上主義」がまだ優先されている空気感も少なからず感じられる。発育過程の年代から自身のカラダへの理解度を深めたうえで、野球を楽しむ。それが風潮ではなく習慣となるために。地道な活動の一つに過ぎないが、よりよい未来のための変化がそこには確かにあった。
そして今年の12球団ジュニアトーナメントも、未来の野球界のための素晴らしい大会になることを祈るばかりだ。(デイリースポーツ特約記者・田尻耕太郎)