【野球】社会人を率いる渡辺俊介監督、伝えるのは“ボビーの熱”
目指すは千葉のファンの胸に刻まれた、あのチーム-。社会人野球・日本製鉄かずさマジックの監督に就任した、元ロッテの渡辺俊介監督(43)。都市対抗、日本選手権の2大大会制覇へ、理想のチームにボビー・バレンタイン氏(69)が監督として作り上げた05年のロッテを挙げた。
大胆な起用法と戦術で、チームを31年ぶりのリーグ優勝、そして日本一に導いたバレンタイン氏。当時の日本一メンバーの一員である渡辺監督が目指すのはチームカラーもさることながら、ボビーが見せた人材活用法。“ボビーマジック”と称されたグラウンド内の戦術。その裏にあった強さの根源だ。
「ボビーは作戦面が得意な監督だったが投手、守備、打撃のことは、それぞれのセクションで(担当コーチに)信頼を置いた。ミーティングも好きでコミュニケーションも取っていた」とし、さらに「スコアラーでも能力があればコーチに引き上げたし、アナリストも優秀であれば実績は関係なく登用をしていた」と振り返った。
ワンマンな部分もあったが、それでも「チームが勝つため」という方針をぶれさせないことを前提に選手がプレーしやすい環境を整え、その中で「とらわれない自由さ、新しいことをやる」という姿勢がチームを1つにしていたと力説する。
渡辺監督もその監督像に近づくため、取り組みを始めた。元DeNAの松本啓二朗外野手らを兼任コーチとするなどスタッフを増員し、戦術、守備、打撃、投手と各分野での役割を細分化。月1回程だったスタッフミーティングの回数を増やすと、現在は活発な意見交換から、ほぼ毎日行われるまでになった。
「それぞれの分野で僕よりも能力を持っている人たちに協力してもらいながら、何がベストかを見つけていく」と渡辺監督。明確な方針は選手にも伝わり始め「手応えは感じている」と話した。
年間143試合を戦うプロと一発勝負の社会人野球では、選手数も戦術も変わる。それでも「データも取るし、新しいこと、相手が嫌がることもする。それが一見バラバラのように見えて、勝つために一番確率が高いものが選ばれていた」と戦う組織として共有できる要素は多いとする。
何より特筆すべきはプレーオフを勝ち上がった短期決戦の強さだ。「あのときのプレーオフの戦い方、ボビーの勢いの付け方は参考になる。負ける気がしなかった空気感。そしてみんなが、見ている方も野球を楽しんでいる一体感があった」。
20年のチームスローガンは「結束」。選手、スタッフ、ファンの力が集約されたムーブメント。あの“熱”が社会人野球で再現されるとなれば、今から期待せずにはいられない。(デイリースポーツ・中田康博)