【野球】楽天の積極補強の裏にある未来図 “背中を示していける選手”獲得
このオフも積極的な補強を続けている楽天。FAで鈴木大地内野手(30)、前パドレスの牧田和久投手(35)、ロッテから金銭トレードで涌井秀章投手(33)が加入した。中堅、ベテラン選手の獲得が目立つが、その裏に中期的なチーム作りの狙いも隠されている。
昨オフのFAでの浅村獲得を皮切りに続く積極補強。石井一久GM(46)は「短期的には優勝を狙えるチームになってきていると思う」と手応えを口にする。ただ一方で「ウチは若手を育てていかないといけない」という方針も示している。
一見、ベテランクラスの選手獲得は短期的な戦力補強として、育成と逆行しているようにも感じるが、獲得選手には1つの共通テーマが見える。『その背中を示していける選手』ということだ。
勝負強い打撃以上にキャプテンシーが評価される鈴木大。先発、抑え、そして米国でのプレーと豊富な経験を持つ牧田。そして「ハードワークができる選手」と評する涌井。個性豊かな新戦力は則本昂や岸ら既存の主力を含め、若手が追う背中に“選択肢の幅”を与えることにつながる。
補強の意図を、石井GMは涌井獲得時に「今度は中期的なビジョンを作っていかないといけない。(涌井が)若い選手がポジションを狙ってくるところを蹴散らすぐらいじゃないとチーム力は上がってこない。そこで彼を蹴散らすことが、中期的に優勝を狙える若手が育ってくるということ」。そう説明した。
創設から15年間で養われた、選手間の仲間意識の強さ、東北のファンの温かい支援も伴う“絆”はチームの伝統と映る。だが強くあり続けるためには、そこに厳しさも必要だ。補強が生む競争力。その下で築かれる力を、新たな伝統として加えることが重要だろう。
これまでの補強を経て石井GMは「スポットを与えないといけないチーム状況は打破できた」としている。それは戦力不足でポジションを若手に与える形ではなく、ポジションを埋め、それを上回る力の台頭を促すことだ。
主力選手を超えることは容易ではない。だが鈴木大を、牧田を、涌井を超える若手が現れた時、新しく強固な真の伝統ができあがるのではないか。多くの選手は「チームが間違いなく強くなる」と変化を感じている。楽天の変革は次の段階に進んだ。今後表れる化学反応に注目したい。(デイリースポーツ・中田康博)