【野球】広島の新米スコアラー、最初の悩みは?岩本貴裕氏の場合
広島カープの外野手として活躍し、昨季限りで11年間の現役生活に別れを告げた岩本貴裕氏(33)が、今季からスコアラーとしてチームを支える。担当球団はヤクルトで、2月の春季キャンプから密着マークし、データを収集、分析してきた。ユニホームを脱いでも裏方として勝利に貢献するのが使命だ。
収集、分析した担当球団の情報を佐々岡監督や選手に伝えるのが今季からの岩本氏の仕事だ。「選手が思いきってやれるように背中を後押ししたいと思っています」。スコアラーとして第2の野球人生が始まった。
春季キャンプではヤクルトが練習を行う浦添市民球場に足を運んだ。バックネット裏に腰を下ろし、燕ナインの動きを目で追う。ブルペンで投球練習が始まれば移動して投手陣をチェックした。新しい球種を投げていないか?球の質は?特徴の把握に務めた。
最初の悩みは選手を覚えること。「ヤクルトはイースタンだから」。ウエスタン・リーグに所属する選手なら対戦経験があるが、イースタン・リーグはほとんどない。顔が分からない若手選手も多い。何もかもが一からのスタートだった。
昨季のヤクルト戦は13勝12敗で勝ち越したものの、V奪回のためには勝ち星をさらに上積みしたい。相手は打力に優れ、山田、青木、雄平や昨季36本塁打で新人王に輝いた村上らがそろう。「調子が良いときと悪いときのスイングの違いを見ていた」。わずかな違いも見逃さない。オープン戦や練習試合でも徹底マークを続けた。
投手目線での分析も欠かさなかった。自身が現役だった昨季までもベンチでは「どうすればこの打者を打ち取れるか。自分で配球を考えながら見ていた」という。野手、投手の両面の視点を持ち頭をフル回転させた。
「僕は広島の出身。小さい頃から市民(旧広島市民球場)に応援に行き、地元球団に入れた。“がんちゃん、がんちゃん”と呼んでくれてうれしかった」
11年間プレーしたカープから昨年10月に戦力外通告。その後、スコアラー就任の打診を受けた。「11年間、お世話になったので、少しでも恩返ししたいと思った。声をかけてもらってうれしかった」。家族と今後について話し合いをする前に心は決まっていた。
シーズン中はヤクルトの試合に帯同し、選手の癖や傾向などさまざまな情報を収集。カープがヤクルトと戦う際、試合前のミーティングや試合中のベンチで分析したデータを自軍の選手に伝える。「自分がわかっていても選手に伝わらないと意味がない」。限られた時間の中で的確な助言を送るためにも言葉選びは重要。故野村克也氏の著書を読み、勉強している。
「打席に入る前に迷いを消せるようなことができたらいい」と力を込めた。選手から裏方へ立場が変わっても勝利を信じ、チームと一緒に戦っていく。(デイリースポーツ・市尻達拡)
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