【野球】オリックスはなぜ山本由伸をドラフト4位で指名できたのか?
今年も2月12日にオリックスのキャンプ地・宮崎で『和男会』が開かれた。
参加メンバーは山本由伸投手、張奕投手、荒西祐大投手、佐野皓大外野手、広沢伸哉内野手、宜保翔内野手と山口和男スカウトグループ長。山口スカウトが担当した選手たちとの親睦会だ。
スカウトと担当選手との関係は不思議だ。親子のように思える場合もあるし、学校の先生と生徒のようにも見えるときもある。
ある選手が活躍したときに山口スカウトと話す機会があった。喜ぶかと思いきや「アイツはすぐに調子のるからあんまり褒めたらダメです」と真顔で返してきた。冗談とも本気ともつかない話しぶり。性格まで知り尽くすからこそだと感じた。
山口スカウトが指名した選手たちは次代のオリックスを背負う選手として期待されている。中でも山本は昨季、最優秀防御率のタイトルを獲得し、プレミア12ではセットアッパーとして世界一に貢献した。球界を代表する投手に成長した。
山本は都城からドラフト4位でオリックスに入団している。なぜ、こんな逸材を4位で指名できたのか。
こんな逸話が残る。当時、山本はれいめい・太田龍(巨人)、九産大九産・梅野雄吾(ヤクルト)、福岡大大濠・浜地真澄(阪神)らとともに九州四天王と呼ばれ注目される投手だった。ところが3年春にスカウトの間で怪情報が流れた。
「山本は足をケガしたから社会人に行くらしい」
各球団が手を引く中、山口スカウトだけは自分の目を疑わなかった。球団にケガは大したことない、絶対指名するべき素材と訴えた。ならばと当時の長村本部長らが宮崎へ向けて視察の手はずを整えようとしたが、これを止めた。本部長が動けばオリックスが狙っていると他球団に伝わってしまう。
「間違いない選手ですから。信じて下さい」
球団幹部を説き伏せた。結果、4位で指名できたというわけだ。
山本は今季から背番号18を背負う。それはかつて山口和男が現役時代に背負った番号でもある。
山本は背番号変更について「僕が知っているオリックスの背番号18といえば山口和男さん(スカウト)、酒井勉さん(育成コーチ)、岸田さんとお世話になり、人間的にも素晴らしい方々。特に山口さんはスカウトとしてプロに入れていただいた。一緒の背番号で恩返しをしたい」と話した。
選手と担当スカウトの不思議な関係。他者には分からないが、そこには人生を賭けた濃厚なドラマが存在する。(デイリースポーツ・達野淳司)