【野球】大島洋平 竜の安打製造機が見初めた虎のバットマン
昨年12月、名古屋市内の寿司屋でタイトル獲得祝いを兼ねた忘年会が開かれた。リーグトップの174安打を放ち、プロ10年目にして初めての冠となる最多安打を獲得した中日・大島洋平。大将が握る絶品の寿司に舌鼓を打ちながら大島は、とある新人選手のことを語り始めた。
その選手とは、シーズン159安打を放ち、巨人・長嶋茂雄が保持していたセ・リーグ新人のシーズン最多安打記録を61年ぶりに更新すると同時に、36盗塁をマークして新人では2001年の阪神・赤星憲広以来2人目となる盗塁王を獲得した阪神・近本光司だ。
昨年はいろんな表彰式などで一緒になり、同じ外野手ということもあって、同じ時間帯を過ごすことが多かったという。一流選手だけが集う舞台に初見参。それだけで緊張してしまいそうなものなのに、近本はいろんな選手に近寄り、打撃、守備、走塁と貪欲に質問を重ねていたという。
「僕も近本と一緒で高校-大学-社会人を経てプロに入ったので、ほかの新人より年は食ってたんですけど、彼と同じように先輩たちを質問攻めにはできなかったですね。野球に対しての探究心っていうんですか、底知れぬものを感じましたよ」
打撃ならばバットの出し方、この投手へのタイミングの取り方…。守備ならば打球の追い方、フェンス際の打球処理法…。走塁ならば重心の移動法、トップスピードに早く乗るためのコツなど。少しのためらいも見せず、目を輝かせて相手の声に耳を傾ける姿が印象的だったという。
さらに大島を驚かせたのは…。「彼がすごいのは、先輩に聞いて、言われたから全部を吸収しなきゃっていうんじゃなくて、自分に合うものは取り入れて、自分に合わないなと思うものはきっちり排除しようとしてたところ。ルーキーでなかなかそこまでできないもんですよ」と感服していた。
8年ぶりのAクラス、9年ぶりのリーグ制覇を狙う今季。左打ちの俊足巧打の外野手という肩書が似ている“ライバル”をどう見ているのか。
「そこは話が別ですよ。僕にもまだ引き出しがたくさんありますし、まだまだ彼に負けるとも思ってません。でも、一番大事なのはチームが勝つこと。その中で自分の成績が伴っていくことがベストなので。お互いに高いレベルで競い合えればとは思いますね」
12年に盗塁王とベストナインに輝き、ゴールデングラブ賞は昨年を含めて7度獲得している名手。体のケアなどをお願いしているトレーナーからは「まだ100%のポテンシャルを引き出せてるわけじゃない。伸びしろ十分」と言われているという。走攻守。高次元の争いがナゴヤドームで、甲子園で繰り広げられる。(デイリースポーツ・鈴木健一)