星稜出身で世界的な日本人アスリートがいる。巨人や米大リーグのヤンキースなどで活躍した松井秀喜氏と、サッカー日本代表として３度のワールドカップ出場を果たし、今はボタフォゴ所属の本田圭佑だ。関わりのある星稜名誉監督の山下智茂氏は、２人の共通点をこう話す。

　「頭がいいことですね。プロではいくら技術が良くても、頭が良くないとダメですから。あとは、自分というものを持っているかどうかですね」

　山下氏には星稜監督時代、松井氏に関して忘れられない記憶がある。１年生の冬休みのある日、ティー打撃を行っていた時に他の選手が快音を響かせる中で、松井氏のバットからはさほど音が聞こえてこなかったという。

　「黙って見ていると、松井はボールの下を打ってスピンをかける打ち方を練習してました。こいつは違うなと、伸ばしてやろうと思って注意しませんでした。自分で考えてやっているなと」

　周りからは勝手なことをやっているように映り「怒らないのですか？」と声も挙がったが、山下氏は「松井は考えてやっているから」と自主性を尊重。そのことから、松井氏から野球部の引退時に「僕が考えて練習をやってた時に監督さんは何も言わなくてありがとうございました」と頭を下げられた。星稜での３年間が後の活躍につながったと言える。

　一方、本田とは、当時社会科の教諭でもあった山下氏にとって教師と１人の生徒の関係だった。競技は違っても「『松井さんみたいに一流になるためにはどうしたらいいですか？』とよく聞きに来ましたね」と振り返る。

　「本田も頭が良くて、自分を持っていました。個性があって自分の主張もすごくて。『松井もよく本を読んでいたぞ』と話したりしました。朝も早くから練習してましたね」

　星稜出身の新たなスター候補生には、昨夏の甲子園準優勝に貢献したヤクルトのドラフト１位・奥川恭伸がいる。山下氏は「私は奥川を直接教えたわけではないので」と前置きした上で「彼も個人的なトレーニングを自分で考えてやってました」と振り返った。

　「（星稜入学時の）素材としては奥川は松井より上でしょう。松井は入ってきた時には松井よりも上の選手が３人いましたから。ただ、そこから松井は一番努力してああいった選手になったんです」

　自分で考え、信念を持った上で努力を積み重ねられるか。「名将」が奥川に見出す２人のスターとの共通点。今後奥川がどういった努力を続け、成長をとげるかが興味深い。（デイリースポーツ・道辻　歩）