【スポーツ】ボクシング日本代表コロナ禍で対人練習不足に不安 ウズベキスタンの名将が指針
アマチュアボクシングを統括する日本ボクシング連盟は、4月後半から4回の予定で東京五輪代表と同世界最終予選(日時、場所未定)を対象にしたオンライン講座を開催している。18日の初回は、2012年ロンドン五輪金メダルで現WBA世界ミドル級王者、村田諒太(帝拳)の講義に選手が熱心に聞き入った。
19日に行われたのは、強豪ウズベキスタンの名将で日本代表の専任コーチを務めるウラジミール・シン氏の講義だ。本来なら東京五輪の1年延期が決まり、この時期は改めて国内外で強化合宿が行われるはずだったが、新型コロナの感染拡大の影響で各選手はそれぞれの拠点に帰っている。多くの選手が個別で練習を行っているため、同講義では練習不足を心配する声も上がった。特に対人練習については、感染を防ぐために自粛せざるを得ない部分もあり、不安を抱える選手は多い。
シン氏は「個人的には7月頃にチームの活動を再開し、ウズベキスタンで合同合宿を行いたい」とし、コロナ禍の終息を前提にJOC(日本オリンピック委員会)、AIBA(国際ボクシング協会)、日本連盟と話し合う意向を示した。日本連盟によると、1週間の具体的な自宅練習のメニューも指示したという。現状では7月活動再開の可能性は未知数だが、バラバラになっているチームに一つの指針を示した形だ。
シン氏は、旧ソ連王者として1982年世界選手権で銅メダルを獲得。指導者としては16年リオデジャネイロ五輪でウズベキスタンに金3個を含む7個のメダルをもたらした実績を持つ。2018年に日本の専任コーチに就任し、東京五輪への強化の中心を担ってきた。
アマボクシングの日本代表クラスでの外国人指導者は近年例がなく、シン氏の指導はこれまでの日本式とは違いがある。昨年1月に標高約2000メートルの米国・コロラド、7月に蔵王のナショナルトレーニングセンター(NTC)高地トレーニング強化施設、8月に福島・会津若松市の標高800メートル付近と継続して高地トレーニングを行ったのも異例だった。
今年1月には自らの人脈を生かし、強国カザフスタンで五輪予選へ向けた合宿を行った。現地ではカザフスタン、キューバの強豪選手とのスパーリングも行われ、日本の若い選手は強豪国の力を肌で知る機会になった。
五輪競技から除外されるピンチを回避したボクシングだが、それを乗り越えててもなお、予選延期など選手にとって苦難の道は続いている。今回のオンライン講義後、女子フライ級の並木月海(自衛隊)は「1週間の練習メニューをいただけたので、無駄もなく練習に臨むことができると思いました。こんな時期だからこそ日々の鍛錬が大切だと分かりました」とコメントした。先が読めない状況で、指導者もできることは限られる。だからこそ、名将の手腕を期待したい。