【野球】阪神・高橋遥人が次期エースと呼ばれるゆえん 魅力的な“空振りを奪う力”
今の阪神投手陣の中で、次期エースは誰か-。オリックスからFA移籍してきた西勇輝が今季の開幕投手に指名されたが、矢野監督ら首脳陣は大卒3年目左腕・高橋遥人の名前を挙げる。着目すべきは「空振り率」の高さだ。
共同通信デジタルの投手成績を調べていくと、各球団のエースと高橋遥に共通するあるデータがある。それが「空振り率」という項目であり、全投球数の内、空振りを奪った数を抽出し、パーセンテージ化したものだ。
当然、この数値はリリーフ投手が圧倒的に高い。阪神で言えばピアース・ジョンソンがチーム内で最も高い16・2パーセントだった。一方で先発投手に目を向けても、巨人・菅野、ソフトバンク・千賀ら球界を代表するエースは10パーセントを超えてきている。昨季、阪神の先発陣で全投球数が1500球を超えているピッチャーの内、高橋遥だけが唯一の2桁台となる10・8をマークしていた。
3月上旬に阪神・金村投手コーチを取材した際、「空振りを取れるというのは魅力の一つだし、すごく先発投手として重要なことだと思う。先発でも試合の中でどうしても空振りが欲しい時ってあるわけだから。狙って空振りを取れるというのは、彼の魅力だと思うよ」と語っていた。
さらに「その空振り率という数字は今年、また上がってくると思う。それは遥人がカーブを覚えたから。緩急を使えるようになったことで、あのキレのあるストレートがより生きるようになる。そういう意味でも楽しみだよね」。高橋遥の昨季の球種構成表を見ると、150キロ前後のストレート、130キロ台後半のカットボール、そして140キロ前後で鋭く落ちるツーシームで占めている。
すべてが“速い変化球”で球速帯に偏りが出ており、ここに110キロ台のカーブが加わることでバランスが取れるようになった。昨季、直球だけに限った空振り率は6・4パーセント。この数値が上昇すれば、リリーフ投手並みの奪三振能力を持った先発ピッチャーになる可能性を秘めている。
高橋遥も3月上旬に取材した際、「真っすぐで空振りが取れていない傾向もあるので、カーブを使うことでそこが改善されればいいかなと思っています」と明かしていた。さらに「追い込んでからしっかり振らせるボールというのは意識したい。ストライクからボールゾーンに投げきるとか。どうしても追い込んでから打たれたケースが多かったので。投げるボールの意図、狙いというのは意識してやっていきたいと思います」と力を込めていた。
空振りを奪う能力は、誰しもが持っているわけではない。どんなにキレのいい変化球があっても、基本となるストレートが良くなければ1軍のバッターは確実に対応してくる。周囲がうらやむような直球の軌道とキレは、間違いなく若き左腕の武器。そこが次代のエースと呼ばれるゆえんの一つだ。(デイリースポーツ・重松健三)