【野球】阪神 メッセンジャーが後輩に伝えたかったこと
昨年限りで現役生活を全うした阪神・メッセンジャー。来日1年目の2010年から阪神担当として見てきたが、本当に日本で成長したように思う。来日1年目の開幕直後にリリーフ失格の烙印(らくいん)を押され、先発に転向。そこから球団の助っ人投手では歴代2位の98勝をマークし、ジーン・バッキーが持つ球団記録まであと2勝に迫った中でユニホームを脱いだ。
長身から繰り出される力強いストレート、縦に大きく割れるカーブ、さらにカットボール、スプリット、スライダーとどの球種も一級品だった。その一方で、メッセンジャー本人が先発投手として活躍を続けるために、大切にしていたのがけん制などフィールディングの部分だった。
「短いイニングであれば、ボールの勢い、強さだけを追い求めていけばいいと思う。ただそれでは長いイニングは投げられない。ピッチャーの総合力として、フィールディングであったり、投球以外の部分にも取り組まないといけない」
こんな話をこんこんと訴えていたのが17年の秋だったと思う。当時、投手陣には守備に難のある選手が多かった。そんな中でメッセンジャーは大柄にもかかわらず、フィールディングに安定感があり、クイックも抜群に速かった。
そんなメッセの持論を聞いていただけに、翌年のキャンプでチームがレベルアップするには?そんな質問を振った時だった。
「若い人というのはベテランの姿や背中を見て、自分たちの練習に影響を与えていると思う。そういった意味で、僕はベテランとしてそんな姿勢を見せることによって若い人にも影響を与えられると思っている。正しい練習をしっかりしていたら、試合になってもしっかりできる。練習の時から気を抜いてやっていると試合になってもミスをするからね」
その上で「だから若い人には声をかけるようにしている。メジャーに入った時に規範となる選手がいたのは確か。チーム内にいるベテランの選手から学ぶことも多くあったよ」と語っていたメッセンジャー。成績を残すためには何が必要か、勝てるピッチャーになるためには何が必要か-。それを自分の背中、姿勢で感じてほしかったんだと思う。
「練習はウソをつかない」という日本の格言を誰よりも信じ、実践していたメッセンジャー。もし指導者として再び日本に帰ってくることがあるならば…。日本人よりも“日本の野球”を選手にたたき込んでくれるかもしれない。(デイリースポーツ・重松健三)