【野球】阪神・福留がやり抜いた驚異の練習 いまも第一線でプレーする礎
球界最年長選手として、今も阪神に欠かせない主力打者として活躍する福留。阪神担当時代にベテランの練習風景を見ていると、本当に一切の妥協がない。キャンプ中にスイングを組み立てていく様は求道者の感があり「パーツから作っていくこともあるし、先に全体像をイメージしてから部分、部分を意識していくこともある。それは自分が経験して作ってきた引き出しがあるから」と教えてもらったことがあった。
そのルーツを探っていくと、若手時代にやった豊富な練習へと行き着く。福留のルーキー時代に中日の1軍打撃コーチとして指導し、各球団で打撃コーチを歴任した水谷実雄氏は、阪神の1軍チーフ打撃コーチ時代に「福留が一番よく練習した」と明かしていた。
午前中からフリー打撃や守備練習など通常メニューを一通りこなした後、個別練習の時間に移ると500球のボールを用意。それをホームからセンター方向へ向けて、ロングティーを打っていく。カゴからボールがなくなると、今度は打球を飛ばしたセンター方向でボールを拾い集め、同じ500球をバックネットに向かって打っていくという。
往復のロングティーで所要時間は約2時間半。「広島のコーチ時代に市民球場でやっていた練習なんやけど、それを福留に教えたら、最後はこっちが何も言わんと自分からやるようになっていた」と明かした水谷氏。メジャーから阪神へ移った2013年、不振のため2軍落ちした時もあった。その際に甲子園や鳴尾浜での2軍戦後に黙々と福留がやっていたのがロングティー。打球の飛び方を確認しながら、足の動き方などをチェックしていた様子が記憶に残っている。
「普通の選手はやれと言ったらやる。でも福留はやれと言わなくても自分で考えてやっとった」と水谷氏。希代のスラッガーが衰えを見せず、今も第一線で活躍を続けられているのも、バットを振り込んできた日々があったからだといえる。(デイリースポーツ・重松健三)