【野球】ドラフト時に「いい選手をとったな」広島オーナーも評価していた阪神・近本

 2018年のドラフト会議後、広島・松田オーナーは「阪神はいい選手を取ったな」とニヤリと笑った。阪神は1位指名した大阪桐蔭・藤原(ロッテ)、立命大・辰己(楽天)のクジを続けて外し、大阪ガス・近本の交渉権を獲得していた。

 松田オーナーはかねて近本の打撃センスを高く評価。スカウト会議が開かれる度、「大阪ガスの近本という選手はいいぞ」と名前を挙げ、「ワシは推しとるんじゃけどな、誰も聞いてくれんわ」とジョーク交じりに話したこともあった。

 「育成のカープ」のドラフト戦略はフロント主導。その年チームの補強ポイントは遊撃手で、当時フルイニング出場を続けていた田中広の後継者探しが急務だった。現場からは即戦力投手を求める声もあったが、大本命は報徳学園・小園で最後まで揺るがなかった。

 スカウト会議に必ず出席する松田オーナーはもちろんチーム事情を全て把握。それとは別にオーナー個人として、近本が好みの選手だったというわけだ。

 2019年、近本は大活躍した。「1番・中堅」に定着し、142試合に出場し、打率・271、9本塁打、42打点。新人王こそヤクルト村上に譲ったが、36盗塁でタイトルを獲得した。小柄ながら思い切りのいい打撃は目を見張るものがあり、今ではすっかり阪神の顔だ。松田オーナーは「活躍すると言っただろう」と得意げで、うれしそうだった。

 あの年、広島は4球団競合の末、緒方監督がクジを引き当てて、小園をドラフト1位で獲得。小園は1年目から1軍でスタメン出場するなど、レギュラー争いに加わる活躍を見せた。そのオフ、丸が巨人にFA移籍、長野が加入した。丸が抜けた中堅レギュラーには内野から外野転向した西川が収まった。

(デイリースポーツ 杉原史恭)

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