【スポーツ】広がり見せる「アジア枠」アジアNo1バスケ大国へ、Bリーグの新挑戦
バスケットボール男子のBリーグは2020-21年シーズンで5季目を迎える。このシーズン、新設された選手出場枠のルールが「アジア特別枠」だ。対象は中国、韓国、台湾、インドネシア、フィリピン。競技力向上と、アジア市場でのマーケティングやスポンサー獲得を含めたビジネス的な拡大を目的に、今回の導入が決まった。
Bリーグではかねて「外国籍選手」「帰化選手」の出場枠を設けてきた。外国籍選手は同時出場が2人まで、加えて1人まで帰化選手が出場できる仕組みだった。今回導入される「アジア特別枠」は、帰化選手と同等の扱いとなる。
このほど、B1三遠がフィリピン代表として活躍するサーディ・ラベナ(23)との契約を発表。アジア特別枠の「第1号」となった。続けて今季B1初挑戦となる信州が年代別代表で主将を務めた梁宰珉(21)=韓国=と契約した。
世界ランク40位の日本に対し、韓国は30位、フィリピンは31位とどちらも上だ。中国は28位。台湾は65位、インドネシアは92位ではあるが、アジアのライバル国の精鋭たちがBリーグに挑戦してくることは、日本のバスケットボール界にとってもプラスに働くはずだ。
サッカーのJリーグでは2012年に「アジア戦略室」を設立。アジア全体のレベルアップをJリーグが主導して促進することで、世界のサッカー市場におけるアジアの価値向上を目指し、アジア戦略を本格始動させた。17年には“タイのメッシ”と呼ばれるMFチャナティップが札幌入りし、タイ国内でもJリーグの注目度が拡大するなどした。
ラベナを迎え入れるB1三遠の北郷謙二郎社長は、ホームタウンである愛知県東三河地域と静岡県遠州地域に多くのフィリピン人が居住していることを挙げながら「彼と契約できたことを誇りに思う」とコメント。フィリピンではバスケットボール人気が非常に高いことから、「リーグとも協力しながら、フィリピンでのBリーグの露出を一緒に図っていければ」と期待を口にしている。
「正直不安で、この決断は簡単ではなかった」というラベナも、入団会見にはチームカラーの赤いTシャツを着て、髪を赤く染めて登場。「ハイレベルなリーグでプレーできるのを楽しみにしている。(ホームタウンには)多くのフィリピン人の方もいるということなので、1000人以上のフィリピンの方に来てもらって、地域を盛り上げていきたい」と意気込みを語った。
Bリーグでは、今季から23年までを「セカンドフェーズ」と位置づけ、アジア戦略の本格稼働を掲げている。試合の放映やインバウンド集客、さらにはリーグが築いてきた仕組みの輸出なども目指すという。
新チェアマンに就任した島田慎二氏(49)は「長い意味で繁栄するために何が必要か。今生き残ることと、未来に紡いでいくことの重要性を考えている」と語っている。FIBAアジアの理事を務める日本協会の三屋裕子会長も「中国がトップだが、日本がアジアのてっぺんだというイメージでアジア戦略は考えている」と言う。コロナ禍で先が見えない中ではあるが、バスケットボールのさらなる発展へ-。視野を「アジア」にも広げ、スタートを切る。(デイリースポーツ・國島紗希)