【野球】楽天 石井GMが積極的にトレードを行う理由「請われて行く」イメージ定着へ

 今年も積極的な補強策に驚かされた。14日に楽天と巨人との間で高梨雄平投手(28)と高田萌生投手(22)の交換トレードが成立。楽天と巨人では6月25日のゼラス・ウィーラー内野手(33)と池田駿投手(27)に続き、早くも今季2件目だ。

 この2件の共通点は、選手を生かすトレードということ。楽天・石井一久GM(46)は「僕も選手だったので、出場機会がある中でできればパフォーマンスが上がったりもする。チャンスがあると感じてもらえる方が練習に身が入る」とした。

 今季は新型コロナ禍での変則的な開幕で先発投手の調整が難しく、“第2先発”を担える中継ぎが重視された影響で高梨は開幕2軍。ウィーラーも外国人枠の争いの中で、開幕を2軍で迎えていた。

 では、自分が球団フロントならばどうするだろう。左投手が少ない現状で高梨は2軍でも置いておく。また、ブラッシュやロメロに故障があった時のために実績のあるウィーラーは戦力的に必要だ-と考えただろうか。

 これは今までの日本球団の考え方でもある。チームにポジションがなくとも有事の保険とされ、ピークを越えた選手同士が他球団へ移る。『請われて行く』のではなく『出される』。一部の大型トレード以外は、それがトレードのイメージとして定着していた。

 石井GMはウィーラーに関して「キャリアを積んできた選手が1軍でプレーできないのは心苦しかった。ウィーラーも出場機会を求めていたので、こちらから環境を探していた」と説明。高梨についても「巨人に望まれて、上(1軍)での出場機会もあると感じた」と話した。

 これまでも一昨年オフに福井と交換で広島に移籍した菊池保、昨季に下水流との交換で同じく広島へ移った三好らは、楽天から移籍後に1軍で出場機会を得た。逆に、投手陣の若返りを図るロッテからは涌井を金銭トレードで獲得している。

 実際の成否を問うのはこれからだが「トレードが悪いというイメージは持っていない。選手が移籍先で良かったなと思ってもらえるところでなければウチも出したくはない」と石井GM。若手有望株の高田を放出した巨人にも、同様の思いがあったように感じる。

 プロ野球選手会と12球団の間では埋もれている選手にチャンスを与えるための「現役ドラフト」の早期導入が検討されている。だが安定的に制度が運用されるためには、幾度かの制度改正など一定の時間を有するだろう。

 今回の楽天と巨人の行ったトレードの形が増えることは「現役ドラフト」制度が成熟化するまでの間にも、出場機会を求める選手たちを生かすことにつながっていく。トレードへの考え方や活用方法は、確実に変わってきていると感じた。(デイリースポーツ・中田康博)

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